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 厳しい試練を乗り越え、断固、やり抜く――。日立製作所が、こんな「ザ・ラストマン(最終決断者)」の育成に力を入れています。経営を担う幹部候補にあえて困難な課題を与え、商機を切り開く経験と実績を求めています。リーマン・ショックの後、国内の製造業で過去最悪という赤字を経験した日立の首脳らは、会社のかじ取りを誤らない経営のプロを育てていく大切さを痛感しています。

■決断下す「ラストマン」たれ

 今のままでは負け続けてしまう。期待を受けたのに英国での仕事はとれないかもしれない――。2014年の夏。日立製作所の冨田浩史さん(47)は焦りを募らせていた。英国の鉄道会社ネットワークレール社が、首都ロンドンの中心を南北に縦断する基幹路線「テムズリンク」の運行管理システムの委託業者を決める入札が迫っていた。

 レール社は自動化が遅れていた旧来の運行管理を見直し、国を挙げてシステムの更新を計画。世界の約60社が参画に意欲を見せ、日立も名乗りを上げた。

 日立は欧州での経験がなく、英国の鉄道システムに精通したベンチャー企業を12年に買収。冨田さんがCEO(最高経営責任者)に就き、日立の鉄道事業と連携して受注プロジェクトの責任者に選ばれた。「海外で仕事を取らないと事業の将来はない。世界を相手に戦ってきてほしい」。上司はこう言って送り出した。

 日立は14年に鉄道部門を束ねる本社機能をロンドンに移転。鉄道発祥の地、英国を拠点に世界の強豪の牙城(がじょう)に食い込み、受注を増やす態勢を整えた。

 新幹線や首都圏の過密ダイヤを支えるシステムが日立の売り。それを英国に「輸出」すれば列車の運行本数は大幅に増える。冨田さんは日立製が世界一だと自負していた。だが、英国にとって新幹線の実績は異国の話。レール社側との事前交渉で海外実績を何度も問われ、受注の脈が細っていくのが分かった。

 そこで、冨田さんは思い切って「メイド・イン・ジャパン」を断念する決断を下した。信号など一部のシステムは、自国で実績のある英国ベンチャー側に担わせ、日立の技術と融合。レール社には「メイド・ウィズ・ジャパン(日本とともに)」だと売り込んだ。日立製に自信を持つ本社の同僚らは難色を示したが、冨田さんが説き伏せた。

 15年7月、テムズリンクのシステムを2400万ポンド(約34億円)で受注できた。一部区間では今年から運用が始まり、18年には全長160キロ、約190駅の全区間に広がる予定だ。

 日立にとって鉄道事業は、国内のJRや大手私鉄に寄り添って仕事をこなせば収益を確保できる時代が続いた。海外はほとんど視野になかった。

 だが、08年のリーマン・ショックが日立を変えた。09年3月期に7873億円という史上最悪の純損失を計上。元副社長で子会社の日立マクセル会長に転じていた川村隆さん(77)が会長兼社長に就き、市場が縮む国内より海外を重視する経営にかじを切った。

 国内で東芝や三菱重工業をライバル視してきた社員にも海外に目を向ける発想の転換を求め、「『ザ・ラストマン』であれ」というメッセージを投げかけた。

 後ろには誰もいない。環境変化…

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