[PR]

■ハジのブラサカ伝道記⑨ 二つの「視界」

 ブラインドサッカーの選手は、ボールが転がる音や敵味方の声を頼りに、どうやって頭の中に試合状況を思い描くのか。仲間の話を聞くと二つのパターンに分かれるようです。

 一つは、ピッチをボードゲームの盤に見立て、選手を駒のように配置する方法です。言わば「俯瞰(ふかん)型」で、僕はこのタイプ。自陣側のやや斜め上から眺める感覚で全体を把握しています。そこでは僕自身も駒の一つとなってピッチに置かれています。

 誰かに教えられたわけではなく、試合や練習を重ねながら自然と身につきました。最初は10メートル四方程度しか盤をイメージできなかったのですが、範囲は徐々に広がりました。ちなみに日本代表では縦40メートル、横20メートルのピッチを格子状に9分割して選手の位置取りなどを決め、戦術の意思統一に生かしています。

 もう一つは、目が見える選手の視界とほぼ同じ光景が頭の中に描かれる形です。視力をなくす前にサッカーを経験している選手は、当時の記憶が役立つのか、こちらの方法で展開を追う傾向が強い。

 「ボイ」という守備のかけ声が聞こえた瞬間、影武者みたいな相手の姿が頭の中の「視界」に現れたり、選手によっては、ボールが遠い場所にある場合は俯瞰型といった感じで二つの「視界」を使い分けたりするそうです。僕はブラサカで両方を使い分けることはできませんが、なぜか、私生活では、目が見える人と同じように周囲を把握しています。

 いま、興味があるのは、世界のトップ選手がどうやって試合状況を思い描いているのか。パラリンピックを4連覇したブラジル代表の選手は、どこまで細かく脳内にピッチを再現することができるのだろう。意外に狭い「視界」でプレーしていたとしたら面白いなあ、なんて想像を巡らせています。

     ◇

 てらにし・はじめ 1990年、広島市生まれ。中学2年生の春に失明し、ブラインドサッカーと出あう。2010年に日本代表デビュー。乃木坂ナイツ所属。和光大学卒業後の13年から日本ブラインドサッカー協会職員となり、小中学校での体験型授業「スポ育」や企業研修の講師としても活躍する。愛称は「ハジ」。174センチ、88キロ。

こんなニュースも