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 ネットの対戦ゲームにはまり、大学2年から授業に出なくなった東京都内の大学生の男性(23)は2014年4月、休学届を出すために、約1年ぶりに大学へ行った。

 門をくぐると、にぎやかな笑い声が響いてきた。授業に出ていない後ろめたさから、うつむいたまま、だれとも視線を合わせないようにして歩いた。

 同じころ、高校時代のサッカー部の仲間の間では、無料通話アプリのLINEで「就活どうする?」という話題が多くなっていたが、ついて行けなかった。

 周囲から取り残されている焦りや劣等感から逃れようと、ますますゲームにのめり込んだ。「先発したい。勝ちたい」。ネットの世界には、自分の存在を認めてくれる居場所があった。

 ただ、ゲームで昼夜逆転した生活が1年以上過ぎ、「引きこもりの自分は何の価値もない」と考えるようになった。大学に行っていないと知らせていた母から、3日に1回の頻度でメールが来た。

 11月、上京した母と2年ぶりに会った。母はネット依存専門の外来がある久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)に相談したと明かした。ゲームをやめろとは言わなかった。「生きてるだけで十分。何年かかってもいいから、大学は卒業してほしいと思っている」

 母が自分のことを思い、言葉を選んでいることがよくわかった。

 翌15年1月、男性はセンターに電話した。「母からネット依存の傾向があると言われた」と伝え、受診の予約を取った。センターのサイトにあったネット依存のスクリーニングテストを受けてみた。結果は「すぐに治療の必要がある」だった。驚きはなかった。

 2月上旬、初めてセンターへ行った。最寄りのバス停に降りると、海が広がっていた。「わぁ、久しぶりに見るなぁ」。少し気分が軽くなった。

 主治医になった樋口進(ひぐちすすむ)院長(62)は問診票を見て「ゲームのランクは今、いくつですか」と尋ねた。

 「先生はゲームのことも知っているんだ」。ゲーム漬けをただ叱るのではなく、穏やかな表情で話を聞く樋口さんに信頼を寄せた。

 次の診療日に体力検査をした。肺年齢は40~50代、骨年齢は30代という結果だった。

<アピタル:患者を生きる・依存症>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/

(宮島祐美)