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 熊本地震の後に熊本県阿蘇市にある内牧(うちのまき)温泉で湯が止まるなどの異変が起きたのは、深さ50メートル付近で地層が水平にずれたのが原因だとする研究成果を九州大のチームがまとめた。未知の活断層が動いたためではなく、地下の泉源には問題がないという。英科学誌サイエンティフィックリポーツ電子版に論文を発表した。

 内牧温泉は夏目漱石の小説「二百十日」ゆかりの温泉。16軒あった温泉宿のほとんどで湯が出なくなるなどの被害があった。九大の辻健(つじたけし)准教授(地球物理学)らは地球観測衛星だいち2号の画像を分析。温泉を含む直径約2キロの円状の地表面が、地震後に北西へ約1・5メートル移動したことが分かった。

 さらに、阿蘇温泉観光旅館協同組合などの協力で、地震後に湯が出なくなった温泉井戸のうち5地点にカメラを入れて調べたところ、いずれも深さ約50メートルで壊れたり曲がったりしていた。このことから、深さ50メートル付近に滑り面があり、それより上の地層が北西に水平移動したと結論づけた。泉源は無事で、組合によると、湯が止まった井戸のそばで深くまで掘り直せば元通りに湯が出てきている。

 滑り面付近の地層は砂や礫(れき)からなり、地下水を多く含む。辻さんは、この層が地震の揺れで液状化した可能性があると推測。温泉周辺の地表に直線状に現れた亀裂や陥没は、未知の活断層が動いてできたとの見方もあったが、水平移動による亀裂とみている。「傾斜地の地滑りは知られているが、平地で水平に滑るのは珍しい。さらに調査したい」と話す。(小林舞子)