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 江國香織さんの新刊『なかなか暮れない夏の夕暮れ』(角川春樹事務所)は、ちょっと変わった構成の小説だ。登場人物が本を読む。読者も一緒にストーリーをたどる。登場人物が本を閉じる。読者も物語の本筋に戻る。そんなことを繰り返して、今度は読者が本を閉じたとき、ふと感じるものは――。

 作中で読書に没頭するのは、独身中年男の稔(みのる)。あるいはソフトクリーム屋で働く茜(あかね)。読むのはたとえば、北欧のミステリーだ。消えた女性ゾーヤを追って旅する中年男ラースが、列車の個室でのどを切られた死体を見つける。

 いつもの江國作品は、死体や血しぶきとは縁遠い。だが、自身はミステリーをよく読むという江國さんが、作中の本の著者になりかわって紡ぐストーリーは魅力十分。ゾーヤはなぜ姿を消したのか。列車の男はなぜ死んだのか。読者が謎に引き込まれ、これが作中作だということを忘れたころ、稔たちはふと本を閉じ、現実に立ち戻る。

 いやおうなしに読者も、稔たちの日常に引き戻される。ある者は妻に去られ、ある者は息子の告白に揺れ、そんな日々に一喜一憂しながら、稔たちはまた本を開く。物語はその繰り返しだ。

 「読んでいるうちに物語の中と外のどっちが現実かわからなくなる、そんなあいまいさを書いてみたかったんです」と江國さん。

 「稔が読む本のなかの現実があ…

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