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 「猫」には2人の女学生が登場する。〈吾輩〉から辛辣(しんらつ)に見られる金田富子ばかりが印象に残るが、もう1人、重要人物として苦沙弥の姪(めい)の雪江さんがいる。一時「東京朝日新聞」の雑報記者だった生方敏郎は『夏目漱石氏の我輩は猫である』(1915年)という評釈本で、雪江さんの登場を「正に万緑叢中(そうちゅう)紅一点の趣」があると言い、作品全体が美しくなるばかりでなく「現実味を帯び人間味を帯びて来る」と賛辞を呈した。

 落第したこの姪は、十章で初めて登場し、終盤のテクストに異化効果をもたらす。苦沙弥の細君との対話を通して、母校で行われた禅哲学者八木独仙の「馬鹿竹」の演説内容を紹介し、富子をハイカラで自己顕示欲が強いと批判し、自らの結婚観を述べ、苦沙弥の家庭の3人の娘たち〈とん子、すん子、めん子〉のほほえましい姿の引き立て役を演じているからだ。苦沙弥と言い合いをして泣かされる可憐(かれん)な場面も仕組まれている。「ハイカラで生意気」な富子像は、苦沙弥の教え子である古井武右衛門らの艶書(えんしょ)事件を招き寄せる。

 「猫」には色恋の話題が底流と…

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