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 ひな祭りのお祝いをしたら早くひな人形を片付けないと、嫁に行き遅れる――。よく聞く言い伝えだ。3日のうちに急いで人形をしまう家庭もあるだろうが、専門家に聞くと、必ずしも急ぐ必要はないようだ。あわてて片付けて、思いがけず人形を傷めてしまうこともあるので、ご注意を。

 尾張徳川家に伝わる絢爛(けんらん)豪華なひな人形を毎年展示する徳川美術館(名古屋市東区)。今年も2月10日から恒例の特別展が始まった。

 今回の展示では尾張徳川家11代斉温(なりはる)の継室・俊恭院福君(さちぎみ)の「菊折枝蒔絵雛(まきえひな)道具」が目玉の一つだ。婚礼調度のミニチュアで、米粒のように小さな将棋の駒や化粧道具など、こまごまとしたパーツが多く、片付けも大変そうだ。同館の四辻秀紀学芸部長によると、幕末の尾張徳川家では、旧暦で翌日の3月4日にお供えをした後に片付けた記録が残っているという。四辻部長は「複数のファンの方から『かわいいから、ひな人形を一年中飾る』という話を聞いた。いろいろな楽しみ方があっていいのでは」と話す。

 同館での片付けは展示終了後に10人ほどの学芸員が、美術品の運搬専門業者の手を借りながら1日で済ませる。「私たちは仕事なので黙々と集中して作業を進めるが、大名家といえども片付けは大変だったのでは」と担当の学芸員、加藤祥平さんは推測する。特別展は4月9日まで。婚礼調度とともに楽しめる。

 名古屋市中区にある「大西人形本店」の4代目店主、大西嘉一郎さん(64)は苦笑いしながら、「迷信ですよ」と言い伝えを否定する。翌日のお供えの後にゆっくり片付ける作法が店で代々伝わってきたからだ。

 「おしゅうとめさんに3日のうちに片付けなさいと言われて、若いお嫁さんがお祝いを終えた当日の夜、ひとりで片付けた苦労話をよく耳にしました」と大西さん。

 あわてて片付けると、布地などに変なシワがついたり、小さな傷や汚れを見逃したりして、人形の劣化を招くことがある。翌年飾るときに人形の傷みに気付き、「急いで直して」と修理を頼む人も多いという。「丁寧に片付けて、人形を大事にしてほしいですね」

 行事文化に詳しい和文化研究家…

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