[PR]

 大学生が共働き家庭を訪問して育児を体験し、夫婦で仕事と子育てをどう両立しているかを学ぶ――。昭和女子大と津田塾大がそんなインターンシップを始めた。「互いに協力すれば仕事を続けられそう」「多様な働き方を体で理解できた」といった参加者の意識の変化に、企画した大学や企業も手応えを感じている。

 「食事はあり合わせのもので、15分くらいで作ってるの」。平日の午後7時すぎ、1級建築士の谷口勝子さん(48)は東京都世田谷区の自宅に帰ると台所に立ち、昭和女子大4年生の山崎夏実さん(22)に話しかけた。隣の居間では谷口さんの長女(11)と次女(8)が宿題をしている。

 昭和女子大は昨年12月から「キャリアママインターンシップ」事業を始めた。学生が同大の付属小に通う子どもを放課後の児童クラブに迎えに行き、自宅や習い事へ送り、親が帰って来るまで一緒に過ごす。その中で、母親に仕事と子育てを両立する方法などを聞く時間も設けている。利用家庭は1時間あたり1500円を学生に払う。これまで、山崎さんら学生14人が4家庭でインターンをしてきた。

 昭和女子大は「良妻賢母教育」だと言われてきた。同大現代ビジネス研究所によると、1年生の授業で将来のキャリアについて尋ねたところ、「子どもができたら、仕事を辞めて家庭に入る」と書いた学生が3分の2以上にのぼった。坂東真理子理事長はインターンシップの狙いについて「仕事と子育ての両立は無理なんだという思い込みにとらわれている学生が多いが、二兎(にと)を追ってもらいたい。ワーキングマザーと出会うことで刺激を受け、人生の選択肢が広がれば」と話す。

 学生の意識にも変化が見られるようになったという。山崎さんは谷口さんの夫が先に帰宅し、夕食を作るのを見て驚いた。自分の母もパートで働いてきたが、父は家で何もしなかったからだ。「女性が限られた時間の中ですべてをやらなければいけないと思っていた。でも、家事育児を分担してくれる男の人と結婚すれば、両立できそう」

 インターンに参加した1年生の平野希さん(19)も「子どもができたら大変そうなので仕事を辞めようと思っていたが、考えが変わった」と話す。

 津田塾大も昨年11月、人材派遣大手のパソナと連携し、「ワーク&ライフ・インターン」を初めて実施し、学生6人が参加した。同社で働く体験に加え、共働きで未就学児を育てている社員の自宅を訪問。仕事と子育ての両立を体験する。親と一緒に子どもを保育園に迎えに行き、自宅で親子と過ごす。同大・学外学修センターの敦賀和外特任教授は「学生の多くは総合職を希望しているが、待機児童問題もあり、小さな子どもを抱えて仕事と育児を両立できるのか、と不安を抱いているため、企画した」と話す。このため、インターン先には保育園児がいる家庭を選んだ。

 参加した学生らからは「多様な働き方が可能だとわかった」「周りのサポートや時間のやりくりで、業務内容を変えずに仕事を続けられることを学んだ」などの声が寄せられたという。今年は夏ごろに開く予定だ。

 男性の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也代表理事は「ワーク・ライフ・バランスは女性だけの問題ではない。共働き家庭の多くは父親も家事、育児を担っているという実態を、女子学生だけでなく男子学生にも見てもらいたい」と話す。(杉山麻里子)

■企業も育児体験を導入

 働き方を変える試みとして社員向けに育児体験を導入した企業もある。リクルートマーケティングパートナーズ(本社・東京都中央区)は昨年、希望する管理職を対象に社員の共働き家庭で4日間、育児を体験する「育ボスブートキャンプ」を始めた。これまで東京、北海道で管理職の1割に当たる男女14人が参加。いずれも子どもはいない。

 2人1組で子どもの保育園の迎えや食事の用意、風呂の準備をし、親が帰宅する午後9時過ぎまで子どもの世話をする。参加者からは「自分の働き方がスタンダードではない、と体で理解できた」「部下の生活にも関心が向くようになった」といった声があったという。

 同社の広報担当者は「多様性への理解やマネジメントスタイルの進化につながっており、意義がある。今後、社員にも広げていきたい」としている。