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(ト)かつお大和煮(税別284円)

 岐阜県で入手した缶詰「(ト)かつお大和煮」の正面には「甲府市テンヨ武田」の文字。しかし販売者は名古屋市の北村商店と、謎めいた商品です。

 最大の消費地は、岐阜県の東濃エリア。春、裏山に筍(たけのこ)がにょきにょきという恵まれた環境のため、筍を使った料理がよく食卓に登場します。定番は「(ト)かつお大和煮」の砂糖と醬油(しょうゆ)の甘辛な味をそのまま生かした筍とかつおの煮物。筍の風味を残す薄味の筍料理とは趣の異なる、ご飯の進むお袋の味です。

 さて、謎解きは丸枠にトの(ト)が鍵。1909(明治42)年の誕生時は宮城県「東間商店」の商標で、17(大正6)年には、甲府市の調味料メーカー「テンヨ武田」に商標と工場が売却されます。戦後、いくつかある(ト)印の中で「かつお大和煮」の製造中止を決定した時、手を挙げたのが「北村商店」。引き継ぎの条件は、テンヨ醬油と(ト)印を使用することでした。

 この時すでに、山梨、長野、岐阜では貴重な魚のおかずとして流通しており、とくに東濃では筍との相性のよさで定着したと考えられ、今では地域に欠かせない存在に。謎の裏には意外な歴史があるものです。

     *

(ト)は丸枠にト

採取地

主婦の店スマイル駒場店(岐阜・中津川)

0573・66・5116

デジタル余話

 現在の販売者「北村商店」の北村篤司社長に促されて試食した、作りたてと賞味期限直前の「(ト)かつお大和煮」。明らかに後者がまろやかで熟成されています。醬油味がなんとも美味。引き継ぎの条件「テンヨの醬油使用」は、定番商品の味を変えないための大事な要素だったのだと納得。ちなみに「テンヨ武田」は「ビミサン」で有名な山梨県内最大の調味料メーカーです。

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菅原佳己(すがわらよしみ) スーパーマーケット研究家。著書に「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」など。

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