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 野球の世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表の侍ジャパンが21日(日本時間22日)、準決勝に臨みます。対戦相手が決まった2次リーグ、F組の最後の試合、米国―ドミニカ共和国の試合を観戦しました。同行させてもらった在米邦字紙の記者に、いよいよ佳境を迎えるWBCの現地での雰囲気などを教えてもらいました。

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 試合があったのは米西海岸カリフォルニア州サンディエゴ。軍港で知られる街で、大リーグ・パドレスの本拠地です。

 もともと取材予定にはなかった観戦でした。侍ジャパンを追いかけてロサンゼルス入りした17日、大会の盛り上がりや日本選手の評価、日系人の応援予定などを知るため、ロサンゼルスで日本語の新聞を発行する「羅府(らふ)新報社」に取材したところ、同社記者の永田潤さん(47)に「準決勝の相手が決まる試合が明日あるから行こう。車に乗せていってあげるよ」と誘われました。翌日、約2時間かけて球場へ。その車中、永田さんに米西海岸での日系人コミュニティーについて尋ねました。

 「侍ジャパン? んー、正直こっちでは認知度は薄いね。今回のチームは弱いと聞いていたから、勝ち上がってきてくれてうれしいけど、選手名まで知っている人は少ないと思うよ」。東京の盛り上がりとの温度差に、少し残念な気がしました。

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 日本人が米西海岸に農業移民として入植して約120年。羅府新報は、1903年に南カリフォルニア大学の日本人学生によって創刊された海外では最古といわれる邦字新聞です。山崎豊子さんの小説「二つの祖国」のモデルになった新聞社といわれています。

 「取材内容は100年前と変わらないよ。県人会の行事や、詩吟や華道の催しなど。日系人高齢者が日本を懐かしむような話題を書くのさ」と、永田さん。日系1世の高齢化に伴う経営危機で、今年中にも廃刊になる可能性もあるそうです。「それだけ日系人が現地化したともいえるし、デジタル化によって若い日系人読者の日本に関する情報入手の方法がネットに流れたともいえるね」

 それはそうと、WBCのような国際大会で日本代表が来れば、さすがに日系人や在留日本人は、まとまって応援するんじゃないですか? そう聞くと、「戦時下の影響で日系人がまとまらないようにされた歴史がある。韓国系はWBCのとき、大型バスを何台も借りて応援にいったのに、日系人にはそういうことを企画する組織がなかった。結束力は薄いね」と永田さん。いまだに残る戦争の影響を知り、山崎豊子さんの小説「二つの祖国」に思い至った次第です。

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 永田さんは、同社日本語編集部の記者をしながら、日本の野球専門誌に大リーグに関する記事を書いてきました。ロサンゼルスが本拠のドジャースに所属した日本人選手については、「野茂(英雄)投手の人気が別格。なんていっても三振がとれたし。あのフォークはすばらしかったと今でも語り草だ」と懐かしみます。

 今回、注目する選手は出身地・大阪の履正社高卒の山田哲人選手とのこと。南米のスター選手はマイナーからはい上がってきたのでタフだとか、ナイター翌日にデーゲームをするWBCの試合日程は移動が多いメジャーリーガーは慣れているはず……などと野球談議に花を咲かせているうち、あっという間にサンディエゴに到着しました。

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 試合は米国が、前回覇者のドミニカ共和国を破り、日本との準決勝が決定。永田さんは「これで盛り上がるね、WBC」と笑顔でした。(サンディエゴ=佐々木洋輔)