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 第89回選抜高校野球大会2日目の20日、多治見は報徳学園(兵庫)と対戦。守備のミスが目立って大量失点し、相手投手を打ち崩せずに大敗した。それでも選手らは、地元から駆けつけた大応援団の声援を受け、初体験の球児の「聖地」で精いっぱい白球を追った。

力の差痛感「夏戻れるよう練習」

 「相手にもならなかった。どこに投げても打たれてしまった」

 大差で敗れた多治見の捕手山田智也君(3年)は試合後、暗い表情を見せた。登板した投手はいずれも失点を重ね、リードする立場として責任を感じていた。

 野球好きの父の影響で野球を始めたのは小学1年のとき。中学では捕手と遊撃手を兼務したが、強肩を買われ、高校1年の春から捕手に専念した。俊足巧打が持ち味で、2年の夏からレギュラーに。

 だが、昨秋の県大会直前、練習中に右ひじを痛めてしまう。ドクターストップがかかり、約2週間も練習ができなかった。県大会は痛みをこらえてぶっつけ本番で臨んだが、準決勝で東海大会出場を決めるサヨナラ適時打を打った。この勝利もあって21世紀枠の推薦候補に選出。初の甲子園出場に大きく貢献した。

 しかし、全国の壁は厚かった。チームは失策が重なり、打撃では散発3安打で無得点。山田君も4打数無安打に終わり、得意の俊足をいかすことができなかった。「正直、歯が立たなかったです」と力の差を痛感させられた。

 それでも好守が光る場面があった。五回、2死から味方が失策をしてしまい、プロのスカウトも注目する報徳学園・小園海斗君(2年)の出塁を許した。次打者の2球目、50メートル走5・8秒の小園君がすかさず二塁に走ったが、山田君の好送球でアウトを奪った。重い雰囲気を断ち切ったプレーに高木裕一監督(54)は「山田は本当によくやってくれた」と目を細めた。

 試合には敗れたが、観客から「夏にまた来いよ!」と声を掛けてもらったという。山田君は、甲子園での温かい声援が「励みになった」と言い、「このままでは勝てない。夏に戻ってこられるように練習します」と話した。(室田賢)

アルプスを埋め尽くす4000人

 強豪を相手に初の夢舞台に挑んだ多治見。三塁側アルプス席は、学校のシンボルカラーである紫の帽子やはちまきで染まり、地元から駆けつけた約4千人の熱い声援が最後まで響き渡った。

 「えらいこっちゃ」。1月27日、卒業生で同窓会長の伊藤良一さん(77)は、選抜初出場決定を校内で聞いた。すぐさま後援会を立ち上げ、募金や応援グッズの準備に奔走した。

 「アルプス席を満員にして大応援を」と地元を盛り上げ、応援団の数は40人乗りバスで90台分にまでなった。「選手たちが堂々と戦えるようにしたかった」と伊藤さん。参加した誰もが、思いは同じだった。

 ハンドボール部顧問の加藤元規教諭(54)は、高木裕一監督と小中学校の同級生。監督から「応援を頼む」と言われ、ハンドボール部を中心に24人の応援団と39人のチアリーダーを急きょ結成した。

 部員らは放課後を使い、他校の応援を参考に練習に励んだ。同部キャプテンの浜部玲央君(3年)は試合を見届けて、「こんな大舞台で応援させてくれてありがとう」と笑顔を見せた。(松浦祥子)