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 認知症の人にやさしい街にするにはどうすればいいのだろう――。いろんな立場の人たちを巻き込んだ取り組みが始まっている。

 専修大ネットワーク情報学部(川崎市)の栗芝正臣准教授と佐藤慶一准教授らが率いるプロジェクトの3年生21人は今年度、どんな方法があるか考えてきた。同市と東京都渋谷区、国内3大学とオランダの大学は昨年4月、「認知症の人が暮らしやすい地域づくり」に向けて連携を開始。その一環の取り組みだ。

 アイデアは、6グループに分かれて練った。梅田一輝さんらのグループは、認知症の人が行方不明になることを防ぐための発信機は、本人が持たずに出かけたら役に立たないことに着目。「自分で作ったものには愛着を持つので、身につけてもらえるのでは」(梅田さん)と、本人が作ったブレスレットに発信機を付けることを思いついた。

 小さな機器を入れ込んだ部品やビーズを用意し、認知症の人や介護スタッフに試作してもらうなかで、「思い出の写真をブレスレットに入れられるようにするのもいいかも」といった助言も得た。

 「認知症になる前に、その人との関係を深めておくことが大事」と考えたグループは、孫と祖父母でオリジナルの「本」を作ることを発案。孫が「どんな仕事をしていたの?」「やりがいは?」などと尋ね、答えを書き込む。

 学生たちは、認知症の本人をはじめ様々な人に会ううちに「認知症のイメージが変わった」という。小此木栞(おこのぎしおり)さんは「忘れちゃうということはあっても、そこを除いたら普通のおじいちゃん、おばあちゃんでした」と話す。

 川崎市地域包括ケア推進室の角野孝一さんは「親のことで認知症への関心が高まってくるのは40代、50代。ほとんど接点を持たない大学生が取り組むことには大きな意味がある」という。4月以降、これらの提案について試行が可能か検討する予定だ。

「普通のカフェで」思い実る

 「Dカフェ=認知症カフェ 開催中」。7日、東京都町田市のスターバックスコーヒー多摩境店の店頭の黒板にそんな案内が掲げられた。一般客も出入りする営業中の店を使った出張型の認知症カフェ「出張Dカフェ」だ。

 まだ珍しい取り組みだが、この日は認知症の本人16人を含め家族や支援者や住民、大学生ら56人が交流した。自分がスタバの店長だったらどうやって認知症の人らが気軽に立ち寄れる店にするか、などのアイデアを出し合った。

 15年12月にスタートした出張Dカフェは、スタバ以外も含め8回目の開催になる。「普通のカフェでやりたい」という本人の声を聞き、市が店側に働きかけて実現した。「これまで認知症カフェには誘っても来なかった方が、スタバのDカフェには顔をだしてくれたこともありました」と市高齢者福祉課の古川歌子係長は言う。

 その町田市は今、「認知症にやさしいまちづくり指標」の作成に取り組む。様々な政策、取り組みの最終的なゴールと達成度を確認できる「ものさし」をつくり、本人や医療・介護関係者、行政、企業などが広く共有しようという狙いだ。広く意見を集めるため、昨年7月~今年1月に3回、検討会を開いた。

 1月は、認知症の本人、医療・介護関係者、家族会、コンビニエンスストアなどの企業、法律関係者、学識者ら約60人が参加。認知症フレンドシップクラブ理事の徳田雄人さんが、議論をふまえ土台となる16の指標の案を示した。「私は、望まない形で、病院・介護施設などに入れられることはない」「私は、趣味や長年の習慣を続けている」など、当事者(私)目線で書かれた大目標だ。参加者は、これらをどう細分化し、具体的にできるか、話しあった。

 「絵に描いた餅」にならないようにと、市は個別政策ごとに5段階で数値評価できる指標もつくる予定。認知症カフェなら例えば「場所の分布」という指標を設定。「コンビニ感覚(徒歩10分圏内)」(評価5)、「バス・電車で1時間の圏域に1カ所」(評価3)など、数字で評価できるようにしていくという。来年度中には指標を完成させ、市のウェブサイトなどに公開する方針という。

<アピタル:ニュース・フォーカス・特集>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(友野賀世、編集委員・清川卓史)