天皇陛下が退位した後の称号について、政府は古来用いられてきた「上皇」とする方向で最終調整に入った。敬称はいまと同じ「陛下」のままとし、一般の皇族に使う「殿下」は用いない。退位後の称号や敬称は、大型連休明けにも国会提出する退位を実現するための特例法案に明記する。

 複数の政府関係者が明らかにした。特例法案の骨格は、第1条に陛下が退位に至る一連の経緯や事情を書き込み、第2条に陛下の退位と皇太子さまの即位を明記。退位後の称号や敬称といった関連規定は第3条以降に記し、全体では10条程度の構成とする方向だ。

 上皇の称号は「太上(だいじょう)天皇」の略称とされ、専門家には太上天皇を支持する意見もある。だが、政府関係者は「天皇より上位にあるように受け取られてしまう」と指摘。新天皇との関係上も、上皇と呼ぶのが望ましいと判断した。上皇が、歴史教育などを通じて広く定着していることも考慮した。

 皇后さまについては、先代の皇后を意味する「皇太后」に代わる称号を検討する。皇太后の称号は皇室典範にも記されているが、「天皇の逝去後に用いられるイメージが強い」(首相官邸幹部)ことから、新称号も選択肢とする。皇后さまの敬称は、天皇陛下と同じ「陛下」のままとする。

 皇室典範には、皇族の範囲について退位後の定めがないため、特例法案には退位後の陛下を皇族とすることも記す。公務が困難となって退位する今回の経緯も踏まえ、再び即位することや摂政に就任することがないことも定める。逝去された場合は、天皇の待遇にならって「大喪の礼」を行い、「陵」に埋葬することも盛り込む。

 政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長=今井敬・経団連名誉会長)は22日、約2カ月ぶりに議論を再開し、皇室史などの専門家4人から意見を聴いた。このヒアリングでも「天皇との上下感を生まないよう『上皇』とすべきだ」(東大史料編纂〈へんさん〉所教授・本郷恵子氏)との意見が出された。同会議は4月上中旬に3回程度の討議を行い、同月21日にも最終提言をとりまとめる。

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〈上皇(じょうこう)〉 退位した後の天皇の呼称。「太上天皇」の略称とされる。697年に退位した持統天皇が最初に太上天皇を名乗り、退位後も大宝律令の制定など政治に関与を続けた。平安時代末期には、上皇が中心となって政治を行う「院政」が定着した。「太上」には「この上なく尊い」という意味が込められている。直近では江戸時代後期の1817年に光格天皇が退位し、太上天皇(上皇)となった。