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 遺伝子を自在に改変できる「ゲノム編集」技術が世界的に普及し、農業や医療で応用が進んでいる。この技術はヒト受精卵にも使われ、中国から既に3例が論文になった。2015、16年の二つの論文は不正確な遺伝子改変など技術上の課題を示したが、今年3月の3本目の論文は「生殖医療」への応用につながる可能性を示した。人類は自らの遺伝子を変える力を手にしつつある。

 これらの研究の目的は、受精卵の段階で遺伝子疾患の原因となる変異を修復して、生まれてくる子の発症を予防することであり、一見、妥当にみえる。しかし、ゲノム編集は誤って新たな変異を起こすこともある。受精卵を子宮に移植する前に遺伝子検査は可能だが、小さな変異は見落としかねない。その結果は子の全身の細胞に影響し、想定外の疾患を起こす恐れがある。ヒトの生命の萌芽(ほうが)に両刃の剣を振りかざす医療を今、目指すべきだろうか。結果次第では人工妊娠中絶もありえる。

 胎児や受精卵を犠牲にしても、健康な子が持てるなら研究は容認するという人もいるかもしれない。

 でも、受精卵診断の例を見てほしい。1998年、日本では社会の合意がないまま、疾患変異の検査目的で研究が始まり、今年は不妊治療目的にも拡大する。海外では既に男女産み分けサービスに堕落した。技術は当初の目的にとどまらず、容易に別の目的に転用できる。受精卵のゲノム編集が、親が望む容姿や資質を持つ「デザイナーベビー」製造に転落しないとは誰も断言できない。

 この問題の一般公開シンポジウムが欧米で開かれ、私も様々な声を聞いた。全米科学アカデミーは今年2月、社会合意を前提条件に、規制と監視の下という事実上不可能なほど厳しい条件を課して、重篤な遺伝子疾患が子に確実に遺伝する場合に限り、将来容認しうると最終報告した。一方の日本は、内閣府調査会が検討を始めたが、中間まとめで、世論を十分に聞かないまま、受精卵ゲノム編集の基礎研究を学会審査に委ねようとしており、極めて奇異だ。

 日本はクリニック数および治療回数ともに、世界一の生殖医療超大国だ。にもかかわらず、生殖医療に直接関係する法律はない。厚生労働省指針は生殖細胞、受精卵の遺伝子改変を禁ずるが、受精卵ゲノム編集は規制対象外の部分がある。技術の進歩が規制を超えたのだ。

 私には、今、日本で自由にヒト…

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