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 名古屋市で女性(当時77)を殺害したほか、仙台市で同級生2人に硫酸タリウムを飲ませたなどとして、殺人や殺人未遂など七つの罪に問われた元少女(21)の裁判員裁判の判決が24日、名古屋地裁であった。山田耕司裁判長は「複数の重大で悪質な犯罪に及んだ犯情は重い。犯行時の年齢や精神障害などの影響を考慮しても、有期刑では軽すぎる」と述べ、求刑通り無期懲役を言い渡した。

 判決によると、元少女は高校2年生だった2012年5~7月、「中毒症状を見てみたい」と中学の同級生女性(21)に硫酸タリウムを約0・8グラム、高校の同級生男性(21)に2回で計約1・2グラムを飲ませて殺害しようとした。また、名古屋大1年生だった14年12月には「人が死ぬ様子を見たい」と考え、名古屋市の自宅アパートで森外茂子(ともこ)さんを殺害。6日後に仙台市の民家に火を放ち、住人3人を殺害しようとするなどした。

 争点はタリウム事件での殺意や、刑事責任能力の有無だった。弁護側は、いずれも重い発達障害と双極性障害が影響したとして、全事件で無罪を訴えていた。

 山田裁判長は殺意について、元少女がタリウムの致死量が約1グラムであることなどの知識を持っていたなどとして、「結果的に死亡しても仕方がないと考えて、犯行に及んだと推認できる」と殺意を認定した。

 刑事責任能力の判断では、元少女が年齢を偽ってタリウムを入手したり、中毒症状を観察しやすい対象を選んだりするなど「筋の通った行動をしている。障害の影響は限定的」と指摘。また、森さんを計画通りに誘い出して殺害し、殺害後に妹(19)に血がついたズボンを洗わせた点などを踏まえ、「自身の意思に基づいて犯行を実行した」と述べるなど、全ての事件で完全責任能力を認めた。

 一方、主文を後回しにした判決では、最後に「処遇意見」に言及。適切な療育や治療を行うよう矯正当局に求め、長期の収容後には仮釈放の弾力的運用で「社会復帰が図られることが適切」と指摘した。

     ◇

 〈タリウム投与・女性殺人など一連の事件(名古屋地裁判決から)〉 ①高校2年生だった2012年5~7月、仙台市で同級生2人に硫酸タリウムを飲ませた殺人未遂罪②名古屋大入学後の14年8月、自作の火炎瓶で仙台市の民家の窓を壊した器物損壊などの罪③同年12月に名古屋市で森外茂子(ともこ)さん(当時77)を殺害した殺人罪④同月に②の民家に火を付けようとした放火未遂・殺人未遂罪――など、計七つの罪が認められた。弁護側は刑事責任能力がなかったと主張し、無罪を主張したが、名古屋地裁は完全責任能力を認めた。

元少女をめぐる事件の経緯

※事件概要は名古屋地裁判決に基づく

〈2012年5月20日〉

 元少女が山形県内の薬局で硫酸タリウムを購入

〈     5月下旬〉

 元少女の父親が自宅近くの宮城県警に薬品(硫酸タリウムは含まず)を持参し相談

〈     5月27日~7月19日〉

 16歳の高校2年生だった時に、中学の同級生女性(21)と高校の同級生(21)に硫酸タリウムを飲ませた(殺人未遂事件=①)

〈   14年8月30日〉

 19歳の名古屋大1年生だった時に、自作した火炎瓶で仙台市の女性宅の窓を損壊した(器物損壊等事件=②)

〈     9月1日〉

 母親(50)が元少女を連れて仙台市の発達障害支援センターを訪問

〈     12月7日〉

 名古屋市のアパートで森外茂子さん(当時77)を殺害(殺人事件=③)

〈       8日〉

 元少女が仙台市の実家に帰省

〈       13日〉

 ②と同じ女性宅の郵便受けにジエチルエーテルを流し込んで火をつけた(放火未遂・殺人未遂事件=④)

〈   15年1月26日〉

 母親が元少女を連れて名古屋市の発達障害支援センターを訪問。精神科の受診を勧められる

〈       27日〉

 ③の事件で森さんの遺体をアパートで発見。殺人容疑で元少女を逮捕

〈     2月12~5月12日〉

 名古屋地検が元少女を鑑定留置

〈     5月15日〉

 ①の事件について殺人未遂容疑で再逮捕 〈     6月5日〉

 ④の事件について殺人未遂と現住建造物等放火容疑(起訴時に放火未遂罪に変更)で再逮捕

〈       11日〉

 ②の事件について器物損壊と火炎瓶処罰法違反容疑で追送検

〈     6月16日〉

 名古屋地検が元少女を名古屋家裁に送致

〈     7月3日~8月末〉

 家裁が元少女を鑑定留置

〈     9月29日〉

 家裁が検察官送致(逆送)を決定

〈     10月8日〉

 名古屋地検が①~④の事件(7罪)で起訴〈   17年1月16日〉

 名古屋地裁で元少女の初公判

〈   17年3月24日〉

 名古屋地裁で求刑通り無期懲役の判決が言い渡される