[PR]

 猛スピードでスキー場を滑り落ちる雪の塊が、山岳部の高校生たちを次々とのみ込んだ。栃木・那須で27日午前に起きた雪崩事故は、8人が亡くなる惨事になった。雪が激しく、強い風が吹く現場。保護者らは不安を募らせ、涙を浮かべた。

 「まさか身内でこんなことが起こるなんて、思ってもいなかった」

 死亡が確認された大田原高校の鏑木(かぶらぎ)悠輔さん(17)の親類女性(68)は27日夜、栃木県那須塩原市の病院で、言葉を詰まらせ、ハンカチで目元をぬぐった。

 病院で対面した鏑木さんは眠っているかのようで、母親が顔を何度も何度もなでていたという。

 大田原高校では同日午後5時過ぎ、堀江幸雄教頭(55)が正門前で取材に応じた。「学校行事でこのようなことが起きたことを重く受け止め、誠意をもって対応する」と声を絞り出した。

 同校は男子校で、県内有数の進学校。山岳部は県内屈指の実力で知られる。夏や冬は山で合宿を行い、県予選1位のみが進出できる高校総体に8年連続で出場しているという。

 今春、生徒に配られた冊子によると、山岳部員は1、2年生で計14人。亡くなった部員の大金実さん(17)は、この冊子で「テントをたてたり、大会に出場したりするにも、個人でできることはほとんどない。同級生どうし絆が深まり、上級生、下級生とも仲が良くなります」と部の魅力をつづっている。山荘から見た朝日の美しさや、冬山の厳しさも紹介。「今後も事故なく安全に登山をして、大会でいい成績を残せるようがんばっていきたい」と意気込んでいた。

 同校の裏手に住む80代の女性は「山岳部は普段大きなリュックを背負い、高校から山の上にある神社まで登る練習をしていた。行儀のいい子たちで、テレビを見て、本当に心配している」と話した。

 生徒にも動揺が広がっている。1年生の生徒は「同じ学校の身近な人が事故に遭いショック。巻き込まれた人たちが心配だ」と話した。4月から入学予定の中学3年生の生徒は、この日午前に同校で新入生のオリエンテーションに参加したばかり。学校から事故についての説明はなく、事故はオリエンテーション後に知った。「びっくりした。入学式がどうなっちゃうのか心配だ」

 「春山講習会」には、大田原高校のほかにも6校の生徒が参加していた。

 矢板中央高校からは山岳部の男子生徒3人と顧問2人が参加。橋本昭司副校長によると、昼前に顧問のうち1人と電話がつながり、「うちの生徒は大丈夫だ」と連絡を受けたという。橋本副校長は「毎年恒例の行事。気をつけろよ、無理はするな、と伝えて送り出しはしたが、まさかこんな大惨事になるなんて」と話した。

 矢板東高校は生徒7人らが参加していた。学校で対応した教諭は「私も新任のときに1度、山岳部の副顧問として春山講習会に参加したことがある。もう30年以上前だが、それ以来ずっと事故なくやってきたのに」と話した。

 真岡高校の教諭は、状況を確認するため現場のスキー場に駆けつけた。生徒8人、教師2人と連絡が取れたが、けがをした生徒も何人かいるといい、搬送先の病院に足早に向かった。

 宇都宮高校は山岳部の部員13人と顧問教諭1人の14人が参加。待機していた斎藤宏夫校長に現地から入った連絡によると、1年生8人は他校の生徒らと上の方を登っていて、2年生5人と顧問の教諭は下の方にいたという。上の方で雪崩が発生したが、生徒と教諭も無事だったという。取材に対し「他の被害にあった高校のこともある」と口を閉ざした。