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 3月下旬とは思えない冷たい雨混じりの鹿児島の地で、彼は90分間のほぼ全ての時間、テクニカルエリアの最前線で選手たちに指示を出し続けていました。

 その人の名は日本代表でキャプテンを務めたこともある宮本恒靖(40)。昨シーズン自らの出身クラブであるガンバ大阪ユースの指揮を執り、今シーズンからはJ3のガンバ大阪U23の監督として、Jクラブ指導者のキャリアをスタートさせました。

 現在、J1のFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪にU23チームがあり、J3に参戦しています。U23チームを率いる監督には、目先の勝ち負けよりもトップチームの強化につながる指導や采配が重要であり、だからこそ、高いパフォーマンスを出した選手がトップチームに招集された後のチームづくりなど、トップチームの監督とは違った難しさがあります。

 この日はアウェーで鹿児島ユナイテッドFCとの対戦。前半は一進一退の攻防が続き、ともに無得点で折り返しましたが、後半12分にペナルティーエリア内でガンバの選手がハンドの反則を犯し、これで与えられたPKが決まって、鹿児島が先制。その後はお互い何度かチャンスがあったものの得点には恵まれず、そのまま1―0で鹿児島が勝利しました。内容的には互角に近いものでしたが、J1でも活躍した丹羽竜平選手や松下年宏選手らが所属する鹿児島の試合運びの上手さに翻弄(ほんろう)された試合でした。

 試合終了後、宮本監督から立ち話程度でしたがお話を伺うことが出来ました。「トップチームで活躍する選手を育てるのが第一目的だけれども、一方でJ3チームの監督としてそれぞれの試合で勝ちにこだわる意識を欠いたことはないし、勝ちたくない監督はいない」「選手の意識をより高めるために、トップチームの選手たちのプレーを見せながら、例えば、今野泰幸選手はこういう意図であのプレーを選択したのだと具体的に伝え、時には自身の現役時代の経験を伝えることで工夫をしている」。そんな話をしてくれました。

 ガンバ大阪U23はこれで開幕から3連敗となり順位も現時点では17チーム中16位と思うような結果は出ていませんが、GKで先発した16歳の谷晃生選手が、再三にわたり好プレーを見せるなど、将来に大きな可能性を感じる選手たちが集まっています。昨シーズンは堂安律選手や初瀬亮選手がこのチームで試合経験を積み、今シーズンはトップチームで活躍しています。

 宮本監督は、ガンバ大阪ユースから日本代表のキャプテンまで上りつめたわけですから、いわば、選手たちの目標を体現した存在です。そうした偉大な先輩に指導されることはこれ以上ない環境ですし、宮本監督自身もU23チームで指導経験を積むことで将来のトップチーム監督、ひいては日本代表の監督を目指していくことでしょう。

 未来の日本代表を想像しながら、U23チームの試合を見て頂くと、トップチームとは違った試合観戦を楽しめるのではないでしょうか。

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吉田 国夫(よしだ くにお)

Jリーグ広報部グループマネージャー。大学卒業後、放送局勤務、プロ野球球団のフロントスタッフを経て、2009年にJリーグに転職し現在に至る。