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 詐欺グループが得た約16億円の犯罪収益を、ナイジェリア人らが日本の金融機関40口座を利用して資金洗浄(マネーロンダリング)していた疑いがある事件。グループの一人で組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の隠匿)と詐欺の疑いで逮捕、起訴され、懲役2年10カ月の実刑判決を受けた女(48)が服役前の昨年9~10月、大阪拘置所で計6回の取材に応じた。「小規模な金融機関ばかり40~50口座を作った」。女は自分名義の口座を開設し、海外から入金された金を引き出す「出し子」だった。

 女はグループの日本人の男に言われるまま、滋賀、大阪、兵庫、石川を転々としたという。同じ銀行の別支店で口座を作るのに不自然にならぬよう住民票を移した。同じ名前では怪しまれると言われ、わずかな面識しかない男性と「偽装結婚」して名字も変えた。

 関与のきっかけは、生活保護を受けながら職を探していた2014年4月だった。一人暮らしをしていた大津市内で偶然、かつての知人に会った。「私でもできる仕事はないだろうか」と思わず尋ねた。紹介されたのは後に詐欺容疑などで逮捕された男(66)。「口座を作って金をおろすだけの仕事だから」。警戒心も抱かず引き受けた。

 「仕事」の連絡が来るのは前日か当日。窓口に行く際にコンビニに立ち寄り、ファクスを受け取った。海外からの送金が正当な商取引だと装うための書類だった。「ソーラーパネルの商品代金です」などと偽り、多いときには1回に約3千万円を引き出したという。

 外で待つナイジェリア人や日本人に金を渡し、引き出し額の1~2%の報酬を受け取った。その先の金の行方は知らなかった。

 あるとき、知人に「犯罪ではないか」と忠告され、「もう辞めたい」と思った。だが500万円以上の借金を抱え、グループの男らにも現金を借りていて抜け出せなかった。「元暴力団」だというグループの一人から、家族に危害が及ぶことも恐れた。

 捜査関係者によると、女は14年6月~15年10月までに計15回約2億8千万円を引き出したという。逮捕は16年4月下旬。最後の仕事から半年が経っていた。金が海外で詐欺被害に遭ったものだということは、逮捕後に初めて知った。

 女の弁護士は裁判で、「言われるがまま動き、手足として利用された」と主張した。「頼まれたら嫌と言えない弱さがあった。人に迷惑をかけないよう生きてきたつもりなのに、なぜこんなことをしてしまったのか」。女は、そう声を震わせた。(中島嘉克)