国賓として来日したスペインのフェリペ6世国王夫妻を歓迎する宮中晩餐(ばんさん)会が5日夜、皇居・宮殿で開かれた。天皇、皇后両陛下の主催で、皇太子ご夫妻や皇族方、安倍晋三首相夫妻ら170人が出席した。宮内庁によると、この出席数は昨年10月のベルギー国王夫妻を招いた宮中晩餐会と並び、平成に入って最多という。

 天皇陛下はおことばで、1953年にスペインを訪問した思い出とともに、当時は両国とも戦争の影響で厳しい状況下にあったと言及。その後、両国が「復興の歩み」を進めたと述べ、「貴国を訪問するたびにその著しい変化を目の当たりにしたことが、感慨深く思い出されます」と語った。

 東日本大震災で福島第一原発事故に対応した警察や消防隊員らに対し、皇太子時代の国王から「アストゥリアス皇太子賞」を贈られたことにも触れ、「真に大きな励ましとなりました」と謝意を伝えた。

 国王は「両陛下は常に国民のために奉仕するという姿勢を貫かれ、そのお姿こそ、世界中の人々が尊敬する日本の生きたイメージでいらっしゃるのです」と話した。

 フェリペ国王は2014年6月、退位した前国王から王位を継承した。皇太子時代に3回来日しているが、国王としては今回が初めて。

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 天皇陛下が5日、スペインのフェリペ6世国王夫妻を招いた宮中晩餐(ばんさん)会でおことばを述べた。全文は次の通り。

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 宴を開くに当たり、まずフェリペ6世国王陛下のご即位に対し、改めてお祝い申し上げます。また、この度は、レティシア王妃陛下と共に、国賓として我が国をご訪問くださり、心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共にすごしますことを、誠にうれしく思います。

 初めて貴国を訪問いたしましたのは、1953年、まだ当時19歳であった私が、英国エリザベス2世女王陛下の戴冠(たいかん)式に参列した後に、欧州諸国を訪問した時のことであります。当時、国王陛下の父君、後のフアン・カルロス1世国王陛下は、いまだサン・セバスティアンでご勉学中であると伺いました。そして今から半世紀ほど前になる1962年に、ご即位前のフアン・カルロス1世国王陛下は、ご成婚後間もないソフィア妃殿下と共に我が国を初めてご訪問になり、爾来(じらい)、スペイン王室と我が国の皇室との交流は長年にわたり積み重ねられてまいりました。

 私どもは、皇太子同妃として2回、そして即位後の1994年には、国賓として貴国を訪問いたしました。いずれの時にも、フアン・カルロス1世国王及びソフィア王妃両陛下を始めとする王室の方々から心のこもったおもてなしを頂き、各地で貴国民の温かい歓迎を受けたことを懐かしく思い起こします。

 私が初めて貴国を訪問した時に、我が国は先の大戦の痛手から立ち直っておらず、また貴国は内戦の影響もあって、共に厳しい状況の下に置かれておりました。その後両国は共に復興の歩みを進め、貴国を訪問するたびにその著しい変化を目の当たりにしたことが、感慨深く思い出されます。

 今夕、このようにしてお迎えしたフェリペ6世国王陛下には、初めてのご訪日として、皇太子殿下のお立場で1990年に私の即位の礼にご参列いただきました。ここに改めて感謝いたします。さらに、1998年には公賓としてご訪問になり、その機会に関西や鎌倉にもいらっしゃいました。また、2005年には、当時皇太子妃殿下でいらした王妃陛下とおそろいで我が国を訪問なさり、愛知で開催された国際博覧会もご覧になっております。

 今から6年前の東日本大震災に際しては、その年の秋、当時まだ皇太子殿下でいらした国王陛下から、福島第一原子力発電所での対応に尽力した警察、消防、自衛隊の隊員が「フクシマの英雄たち」として「アストゥリアス皇太子賞」を頂きました。このことは、震災により大きな被害を受けた我が国の国民にとり、真に大きな励ましとなりました。その折の陛下のお気持ちに対し、心から感謝の意を表します。

 日本とスペインの交流は、1549年のフランシスコ・ザビエルの我が国への渡来に始まっており、我が国にとりスペインは、欧州において最も長い交流の歴史を持つ国の一つであります。1614年には伊達政宗により派遣された支倉常長一行が貴国を訪れ、フェリペ3世国王の拝謁(はいえつ)の栄に浴するなどの交流がありました。このスペイン訪問から400年となる2013年から14年にかけて、「日本スペイン交流400周年」を記念して、両国で様々な交流がなされましたことは、記憶に新しいところであります。

 我が国の鎖国政策により、その後長きにわたり交流が途絶えますが、1868年に修好通商航海条約を締結して両国の国交が再開され、来年両国は修好150周年の記念すべき年を迎えます。

 近年、スペインと日本は、様々な分野での関係を進め、貿易・投資はもとより、学術・文化の交流なども深まってきております。我が国における貴国の絵画、音楽、また文学などへの関心は、古くから今日に至るまで高く、我が国民の貴国への親しい気持ちの基礎をなしております。

 一方貴国においては近年、私どもが2度にわたり訪問したサラマンカ大学にある日本・スペイン文化センターが、両国の学術・文化交流で中心的な役割を担ってきております。同大学には、日本研究を含む東アジア研究学士課程が設けられ、30近い日本の大学が交流を進めており、こうした流れの中で、私ども双方の国民が更に深くお互いを理解しつつ協力していくことを、心から願ってやみません。

 今、日本列島では「桜前線」が北上しています。桜前線が通り過ぎたところからは、競うように若葉がもえ始めます。このような春の喜びに満ちた良い季節に国王王妃両陛下をお迎えできましたことを、大変うれしく思います。両陛下にとり、この度のご訪問が、実り多いものとなり、貴国と我が国の関係が更に一層深まっていくことを心から願っております。

 ここに杯を挙げて、国王陛下及び王妃陛下のご健勝と、スペイン国民の幸せを祈ります。

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 スペインのフェリペ6世国王が5日夜、天皇、皇后両陛下主催の宮中晩餐(ばんさん)会でスピーチした。全文は次の通り。

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 天皇皇后両陛下

 王妃と私を国賓としてお招きいただき、暖かくお迎え下さいましたことを心より御礼申し上げます。私ども二人は皇太子時代の2005年にもこの愛する国を訪れ、忘れ得ぬ思い出となりました。

 日本スペイン両国の古くて深い関係の証しとして貴国からも両陛下と皇太子殿下が我が国を訪問されております。そして今日、両国関係は未来に向かう新しい局面を迎えました。

 両国民の交流は、今から468年前、スペイン人宣教師フランシスコ・ザビエルが日本に到着したときに始まりました。さらに17世紀初頭、我が国との関係樹立を目指して贈られた慶長遣欧使節には、スペイン人も同行しておりました。そして有為転変の歴史を経て19世紀、1868年に再び両国は出会い、正式な外交関係が樹立されました。これら歴史的な出来事は様々な成果をもたらしましたが、その中でも相互の憧憬(しょうけい)、尊敬、親愛の情は常に変わらず継続しております。

 今日スペインと日本両国は、平和と国際秩序を擁護する二つの国家であり、進歩、正義、人権、持続性ある発展という目的を共有しております。

 来年は、両国の外交関係樹立150周年という節目の年を迎えます。両国関係は一層緊密さを増し、様々な分野における日西協力が推進されるものと期待しております。

 両国関係の一層の発展は強固な基盤に基づくものです。2013年には日本とスペイン国交400年を機に、様々な記念行事が行われ、両国政府は、平和、成長、イノベーションのためのパートナーシップ共同声明を発表しました。この三つの言葉は両国の目指す究極の目的をよく表しています。

 平和とは、日本もスペインも国際秩序の擁護と国連の人権憲章の原則と価値観を尊重する断固たる決意を共有しているからです。

 成長とは、日本もスペインも国民のための繁栄と進歩を熱望しており、企業の協力体制も万全です。

 そしてイノベーションは、すべての人々にチャンスがあり、より環境に配慮した持続性ある世界の実現のカギとなるものです。イノベーションこそ生産性と成長のための条件であり、人々の快適な生活に貢献するものといえます。

 さらに両国政府の推進する政策より大切なことは、両国民のコンタクトと知識の交流であり、お互いが相手の国にひかれ、親愛の情を抱いていることだと言えましょう。

 しかし本日私がこの機会に特にお伝えしたいことは、天皇皇后両陛下への私共の深い敬愛と憧憬です。両陛下は常に国民のために奉仕するという姿勢を貫かれ、そのお姿こそ、世界中の人々が尊敬する日本の生きたイメージでいらっしゃるのです。

 ここで、日本とスペイン両国の相互理解と友情が一層深められ、日本国民の繁栄と幸福、両陛下のご健勝を祈念して乾杯し、私の言葉とさせていただきます。