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 SDGs(エスディージーズ)。世界が抱える課題を解決していくための目標に、大学生が関心をもって取り組み始めています。達成の期限となっている2030年は、自分たちの遠くない未来。大きな話を、身の回りから。学生たちの試みを紹介します。

 教室、講堂、食堂、ゴミ箱。神奈川県にある慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のあちこちに昨秋、カラフルなステッカーが登場しました。17分野の国連の持続可能な開発目標(SDGs)が、1枚につき一つ描かれています。トイレの個室にまで貼る念の入れようでした。

 大学の事務局から許可をとりつけ、約2500枚のステッカーを貼って歩いたのは、同大環境情報学部の蟹江憲史教授の研究会の学生。貧困や環境、教育など2030年までに世界が共に取り組むSDGsを知る中で、グローバルな課題解決が自分たちの将来と重なりました。まずはほかの学生にも知ってもらおうと考え出したのが「キャンパスSDGs」プロジェクトでした。

 海の豊かさを守る「目標14」はトイレに、世界から飢えをなくす「目標2」は食堂に。ゴミ箱のふたには、物をつくる責任と使う責任にかかわる「目標12」。食品ロスの問題や食料自給率の低さ、格差の広がりなど、関連する日本のデータも添え、ステッカーにある目標を身近に考えられるようにしました。伊藤園が協賛企業になってくれたそうです。

 プロジェクト期間は3週間。ステッカーのあるキャンパスの写真をSNSで拡散し、興味を持った人にSDGsについての簡単な説明を読んでもらえるように工夫しました。

 プロジェクトの前と後に、SFCの学生を対象にSDGsの認知度をネットを使って調べました。始める前は「全く知らない」が約82%(回答総数112)だったのが、終わった後では「名前だけ知っている」が約52%、「目標まで知っている」が約16%(回答総数216)になりました。

 名前を広めることには、とりあえず成功。ではその次は? 卒業論文でプロジェクトを取り上げた小池航正さんは、「SDGsに示されている課題解決を意識した行動にまでつながらないといけないと思う。相手に応じた働きかけ方の工夫も必要になる」。宿題は、後輩たちに引き継がれました。(北郷美由紀)

     ◇

 〈SDGs〉 地球環境と人々の暮らしを持続的なものとするため、すべての国連加盟国が2030年までに取り組む17分野の目標。極度の貧困と飢えをなくす、といった従来の開発目標に加え、ジェンダーの平等や良好な雇用環境づくり、生産と消費の見直し、海や森の資源保護、安全なまちづくりなど、先進国が直面する課題も入る。15年9月に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかで合意された。目標達成のために必要な、169のターゲットも定められている。

変革へ、小さな一歩目指す 慶応大大学院修士課程1年 和田恵さん

 この春に大学を卒業し、大学院でSDGsについて研究する道を選びました。そんな私も、最初は全然、ピンと来ませんでした。

 環境問題に関心があり、大学3年のときに今の研究会に入りました。SDGs採択の半年前で、資料もほとんどなく、蟹江先生の説明を聞いても意味が分かりませんでした。

 その年の9月、国連で採択され、研究会で「アジェンダ2030」を輪読。各国の熱意が感じられ、感動しました。でも当時、日本ではあまり盛り上がりませんでした。企業の方からは「数が多すぎるからやりづらい」という声も聞きました。SDGsに法的拘束力はなく、各国の自主性に任されています。そこで、各国の取り組み状況を調べ、国際会議などでSDGsをPRしました。

 採択から1年半。少しずつですが、国や企業、若者、地方といったいろんなレベルで動きが生まれていると感じます。国内の健康推進、途上国の農家支援、環境保全などバラバラのジャンルが、SDGsを中心にして連携しています。

 慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)も、分野を超えて多種多様な関心を持つ専門家が集まる場所。「まさに、SDGsを体現している場所だ!」と思います。一人一人がSDGsを意識することで新たなつながりが生まれるのではと、「キャンパスSDGs」に取り組みました。今は次のステップを模索中。「我々の世界を変革するため」の小さな一歩を作っていきたいです。

一人ひとりの生活変える

 新学期が始まり、和田さんと中国からの留学生の史可さんは、インターネットを使ったアンケートで、SDGsのとらえ方を探りました。106人から得た回答の結果はグラフの通り。学生たちは、SDGsをどう自分の生活と結びつけて考えているのでしょうか。記述をみると――。

●水産資源の維持や、農作物の安定供給がなくなれば、今の生活を維持していくこともできない

●労働のあり方やジェンダーの問題など、日本でまだ残っている問題が含まれている

●牽引(けんいん)するのは先進国の役目なので、その一員である限り、自覚の問題ではあるものの責任が生じる

●環境汚染は私たちの生活に深く密接な関係にある

●「目標5」のジェンダー平等は女性の「可能性や選択肢をつぶさない」社会を作ることにかかわる。「目標7」のクリーンエネルギーは使っている電気やその発電方法にかかわる

●健康や教育など、先進国でも解決できていない目標がある

●食べ物をむだにしないなど、できることはたくさんある

●コンビニでおにぎりを購入する場面などでも、具体的なゴールに結びつく

●市民、企業、政府、国家が連携して解決、改善していくもの

●電気のつけっぱなしをみるたび、エネルギー、環境問題などの解決への意識が遠いと感じる

●わかりやすい指標であり、どう世界を構築していくか、そのために自分はどう成長していくべきか考えさせてくれるものだから

●私たちの生活で大量に発生する二酸化炭素(CO2)は環境問題を引き起こし、生態系に影響を与えている

●自分の使いたい資源量が使えるわけではなく、限られた量の中で最大限のパフォーマンスを得ることを考えなくてはいけない

●一人ひとりの生活を変えていくことがゴールの達成につながるから

●17分野の目標は各個人・組織によって関係具合の濃淡はあれど、全世界共通の理想目標だから

●電気の節約や水の節約をする

●食べ残しなど小さなことも大きなものにつながる

●「未来へのための行動計画」なら、何らかの形で日常生活にかかわりがある

 SDGsを知って、これからやりたいことや、調べたいことについても聞きました。

●「自分ごと化」できるようなワークショップなどの企画・実施

●日本がどのように達成しようとしているのか調べる

●達成のための具体的な措置を考え、個人の行動に落とし込むこと

●ビジネスの力をいかに使うか

●消費者としての「使う責任」

●大きな目標達成のため一人ひとりに何ができるか

●政策提言にかかわりたい

●貧困解決のためビジネスを勉強したい

●具体的な貢献ができる場があれば行動したい

●SDGsをもとにした教育活動や新たな支援について学びたい

●防災の観点から目標11の「住み続けられるまちづくり」を考える

●東南アジアの水環境を調べ、より良い環境づくりに貢献したい

●目標としてはわかりやすいが、使い方の面で不明な点が多い、どんな使い方があるか調べていきたい

●スポーツとのかかわりについて

●オリンピックの持続可能性

●エネルギー分野の取り組み

●自分で稼いだお金で無理なく継続的に寄付する

 学生の生活とは結びつかないと思う人たちの記述を見ると――。

●あまり実感できない

●日本では一定の生活水準が保たれており、達成を目指すほどの環境ではないから

●自分の身の回りのことに気をつけているだけでは、国外の問題を抱えている地域には何も影響を与えることができないと思ってしまう

●途上国の開発に重点をおいた目標だと思うから

●国際開発というトピックが自分の日常とは離れている

●実感がわかない

課題解決は夢物語ではなくなるはず

 まだまだ知名度の低いSDGs。私も、最初に聞いた時はピンと来ませんでした。貧困や環境問題などを途上国の課題として「支援する」のではなく、先進国の暮らしから見直していこうというのがその考え方です。言葉は取っつきにくいですが、同じ思いを抱く人がうまくつながれば、課題解決は夢物語ではなくなるはず。大学生が身近な話題に引きつけて関心を高めようという取り組みは、そんなモデルの一つになると感じます。(仲村和代)

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