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 アニメやゲームのキャラクターに扮する「コスプレ」イベントが16日、岡山県矢掛町で開かれた。町の観光団体が「町おこしにつなげたい」と開催を持ちかけ、県内外からコスプレイヤーら約60人が参加。廃校となった高校の校舎や、江戸時代の風情が残る和風建築で、写真撮影を楽しんだ。

 同人誌やコスプレイベントを30年間続けている「ぶちすげぇコミックバトル」の実行委員会の主催。「旧矢掛商業高校」や、町商店街の一部が会場となった。

 参加者の多くは「コスプレネーム」と呼ばれる仮名で交流を楽しむ。

 国の重要文化財「旧矢掛本陣石井家」。中庭で撮影していた倉敷市の専門学校1年の肴(さかな)さん(19)は、ゲーム「刀剣乱舞」のキャラクターの格好をしていた。「よくあるイベントは会場の外に出られないけど、昔ながらの町並みを歩けるのが楽しい」と笑った。

 教室で黒板を背に撮影していたのは、愛媛県から来ていたLeonさん(29)と音小(ねこ)さん(29)。友人同士の2人は高校生が主人公の漫画「黒子のバスケ」のキャラに扮していた。

 Leonさんはイベントについて「体育館も教室も、学校を丸ごと使えるのがいい」。音小さんは「最近は10代から50代までコスプレをする人が広がっている。場所が大事なので、大阪まで遠征することもある」と話した。

 コスプレイヤーたちは作品の世界観に入り込むことを重要視している。そのため、和装のキャラの場合は畳や障子などを背景にし、「ベルサイユのばら」のような洋装なら、シャンデリアなどを背景に撮影することにこだわる。撮影場所を求め、撮影スタジオを借り切ることもある。

 一方、こういった若者たちを呼び込もうと、廃校を開放したり、町を丸ごと撮影会場にしたり、各地の自治体などがイベントを開催している。

 矢掛町で観光案内をしている「やかげ町並案内人」の妹尾浩匡さん(26)は、今回の催しについて「こういうイベントで、外から人が入ってくるのは素晴らしいこと」と歓迎する。

 しかし、開催されることを知ったのはつい最近だといい、「地元全体で周知を徹底し、受け入れる態勢をつくれば、もっと喜んで来てもらえるのではないか」と話した。

キャラが乗り移ったような気分に

 せっかくなので、記者もコスプレをしながら取材をした。選んだのは漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物、岸辺露伴(きしべろはん)。どこにでも取材に出かけ、作品のリアリティーを追い求める漫画家だ。

 参勤交代で使われた旧山陽道の道筋に、白壁と瓦が美しい建物が並ぶ矢掛町。

 まるでドラマに出て来そうな町並みをコスプレ姿で歩くと、漫画のキャラが乗り移ったかのような気持ちになってくる。「取材のしがいがありそうだ」。やる気も出てきた。

 道を歩くだけで町の人たちが「かっこいいね」「中庭で撮っていいよ」と気軽に声をかけてくれた。

 暑さで汗だくになり、メイクも崩れかけた記者を見て、「アイスクリーム、そこで売ってます」と親切に教えてくれた人もいた。

 取材中、「矢掛に初めて来た」と話す参加者が多かった。参加者たちは、撮影した写真をツイッターなどのSNSで発信する。町の人に声をかけられ、「うれしかった」とツイッターでつぶやいた参加者もいた。

 こうした地元と若者たちの交流が次のイベントを生み、ささやかな町のイメージ向上につながるのだろうか。優しい味のアイスを食べながら、思った。(小川奈々)