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 認知症と診断されると一律に運転免許の取り消し・停止となる日本の仕組みについて、海外の認知症の当事者から疑問視する声が出ている。4月29日まで京都市で開かれた認知症国際会議でも取り上げられた。

 国際会議で、豪州のケイト・スワッファーさん(58)が4月27日、認知症の人の人権に関する講演をした。この中で日本の運転免許制度に触れ、認知症と診断されれば運転できなくなることについて「一律の剝奪(はくだつ)は人権が尊重されていないと思う」と指摘した。

 スワッファーさんは49歳のときに認知症と診断された当事者で、2014年に認知症の人たちでつくる国際認知症同盟(DAI)を創設した。現在39カ国に3500人以上のメンバーがいる。

 豪州では、運転免許当局が「安全に運転できる」と判断すれば、認知症の人でも運転を続けられる。細かい仕組みは州ごとに異なるが、医師の意見書と路上での実車評価などに基づき個別判断する原則は共通している。

 スワッファーさんは「(認知症で)記憶力が落ちていても、信号や交通ルールを覚えている人はいる」などとして、「個人個人の状態を見るシステムを入れていただくことが重要だと思います」と述べた。スワッファーさん自身は「実技評価に落ちたあと、50歳で運転免許を取り消された」と著書に記している。

 同じく国際会議に参加した豪州のクリスティーン・ブライデンさん(68)は、先月22日の東京都内での講演で「運転は重要な課題。人権の問題であり、自立に関わる問題だと思う」と発言した。豪州の仕組みについて、「自分が運転できることを証明できれば運転し続けられるのは、ありがたいと思っています」とした。

 ブライデンさんが認知症と診断されたのは1995年。それからてんかんの発作が出て医師に運転を禁止される1年ほど前まで、定期的な医師のチェックと実車評価を受けながら運転を続けていたという。治療でてんかんの状態が落ち着き、1カ月ほど前に医師は運転再開を承認したという。

 ブライデンさんは取材に対し、「日本でも、てんかんは一人一人の状態で運転の可否が判断されると聞いています。認知症も同じような仕組みを採り入れたらいかがでしょうか」と話した。

 認知症の人が認知症でない人と同じように扱われる社会にしようと国際的に活動する団体「GAP」(グローバル・アクション・オン・パーソンフッド)でも議論になっている。GAPは医療や介護の専門職や研究者、認知症の本人や家族らがメンバーで、ケアの質を上げる研修や啓発などに取り組んでいる。

 内部のメーリングリストに、日本から参加する「いまいせ心療センター」(愛知県一宮市)の水野裕・副院長が日本の仕組みについて意見を求めたところ、英国やフランス、ノルウェー、シンガポール、カナダ、米国などから「一律」の扱いに疑問を唱える反応があった。水野副院長は「運転を一律に禁止する制度があることで、一般の人は『認知症の人は危ないということだ』と受け止める。そういう制度をやめないと、認知症の人が他の人と同じように扱われる社会にならないのではないか」と話す。(友野賀世)