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■幸せな老いを探して 米国留学で見たこと:5

 90歳の黒人女性が画面に現れた。

 「どんな子どもだった?」と聞かれるが、彼女は「若い頃にどう過ごしていたか、まったく思い出せない」。

 そんな彼女にヘッドホンをかけてもらう。音楽が流れる。

 「ルイ・アームストロングだわ。ワォ」と笑顔を見せた。流れていたのは「聖者の行進」だ。

 「学生時代を思い出すわ。母さんに内緒でコンサートに行った」「米軍施設で働いていたの」などと、彼女は冗舌に語り出した。そして、「こんなに思い出すなんて」とつぶやいた。

 米国のドキュメンタリー映画「Alive Inside」の一場面だ。認知症の人に思い出の音楽を聴かせるプログラムを担うNPO「ミュージック・アンド・メモリー」を中心に描いている。

 音楽を聴いただけで、認知症の人が驚くほどの変化を見せる。思い入れのある曲を聞くことで、自分の半生を思い出す。映画に登場する神経学者で作家のオリバー・サックス医師は、「音楽は感情に訴える。単に体に刺激を与えるだけではなく、心を呼び戻す」。

 3年にわたる撮影で映画は完成。2014年のサンダンス国際映画祭のドキュメンタリー部門で観客賞を受賞した。日本でも邦題「パーソナル・ソング」としてDVDが発売されている。

■iPodと老人ホーム

 ミュージック・アンド・メモリーは、米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」(アイポッド)とヘッドホンを介護施設に持って行き、高齢者ごとに好きな音楽を集めた曲のリストを作る。いわば自分だけのジュークボックスだ。

 私は、日本で介護施設を訪ねる度に不思議に思うことがあった。軍歌や戦後の流行歌が流れると、聴き入ったり口ずさんだりする高齢者を多く見かけた。でも、全員がこの音楽を好きなのだろうか。

 ニューヨークでアルツハイマーの人の家族を支援している「ケアリング カインド」という団体から、ミュージック・アンド・メモリーを紹介された。私の疑問を解決するヒントになるのではと考え、代表のダン・コーエンさん(65)を訪ねた。

 コーエンさんは、高齢者が集う…

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