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 5月10日から12日の3日間、マイクロソフトは、開発者会議「Microsoft Build2017」を、米ワシントン州シアトルで開催しました。シアトルはマイクロソフトのおひざ元ですが、ここ数年、開発者会議はサンフランシスコで開かれており、シアトルでの開催は久しぶり。2014年にトップが現在のサティア・ナデラ氏(写真1)に代わってからは初めてです。サティア体制のマイクロソフトは、過去のマイクロソフトとは大きく異なる会社です。今回のBuildで発表された内容も、その方針に基づいています。そのほとんどは、「○○というハードウェアが出ました」というような、わかりやすいものではありません。今回Buildで何が発表されたのか、解説してみたいと思います。そこからは、我々の生活が今後どう変わろうとしているのかを読み解くことができます。(ライター・西田宗千佳)

AIと画像認識で企業の課題を解決

 Buildは開発者会議です。ですから、聴衆はあくまで開発者。その多くは、企業向けシステムの開発に従事しています。普段、生活を送っているときに我々の目の前に見える「ITシステム」はパソコンやスマートフォンなどごく一部でしかありません。大半は企業内でその企業の事業遂行と課題解決のために使われています。ですから、Buildでの発表は課題解決のためにどのようなシステムが存在しうるのかという観点のものが中心となります。

 例えば、ステージを使ってこんなデモが行われました。

 壇上には、製造業の作業場を思わせるセットがあります。そこには多数の工具が置かれ、それを使って作業している人々がいます。ステージの隣に設けられた巨大ディスプレーを見ると、そのセットを映している監視カメラからの映像が表示されています。ですが、単に映像が出ているだけではありません。映像の中には多数の「四角い枠」が表示されています。映像は人工知能(AI)による画像認識システムによって解析され、「誰がいるのか」「どの道具がどこに置かれているのか」などの情報が分析され、その枠に名前付きで表示されているのです(写真2)。

 備品の管理に頭を悩ませている企業は多いものです。ケーブルで固定したり、備品に無線IDをつけて移動を管理したりといったやり方が提案されてきましたが、自由度やコストの点で問題も多かったのが実情です。しかしこのやり方なら、システムの側が備品を識別し、その位置を映像で認識するので、働く側は普通に備品を使うだけです。要は、備品の位置と使われ方を判断する人が現場に常に張り付いているのと同じようなことになるわけです。そして、使うべき人でない人が備品を使っている、いるべきでない人がその場にいるといったことも映像で識別できます。同様に、薬剤の入った缶が倒れて何かが漏れ出すといった、事故につながる要因も検出できます。そのような時は、管理者のスマホに画像付きで通知されます。最後の判断は、管理者が手元で行えるわけです。

 この仕組みは、カメラをインテリジェント化する技術、画像を認識するAI技術、管理側でスマホへと通知を送る技術などが組み合わさることで実現しており、現在の環境ならではのものと言えます。マイクロソフトはその全ての分野の技術を保有しており、同社の技術を組み合わせることで、技術者は企業に対し、このような先進的な環境を提案できる……そうマイクロソフトは主張しているのです。

人の行動に合わせて情報を活用、カギは「マイクロソフト・グラフ」に

 別の例も紹介しましょう。

 現在アメリカ市場などを、「スマートスピーカー」という製品が席巻しています。音声認識機能を備えた、ネットにつながるスピーカーです。音楽が聴けるのは当然なのですが、話しかければ、様々な情報を教えてくれたり、買いものができたりします。要はスマホの音声認識機能とAIを、リビングで気軽に使えるようにしたものです。米アマゾンが販売している「Echo」が、2016年だけで500万台を超える大ヒットになっているほか、グーグルも「グーグルホーム」を販売中。様々な企業がここに参入しようとしています。

 そしてもちろん、マイクロソフトも例外ではありません。ウィンドウズ10に搭載されている「コルタナ」をベースにしたスマートスピーカーを開発中で、今回のBuildでデモを公開しました(写真3)。音声で予定を聞くと、きちんと答えてくれます。ただし、マイクロソフトにとって、スマートスピーカーは情報の窓口の一部でしかありません。コルタナが答えるための元になった情報はクラウドにあり、スマホやパソコンからも利用できます。スマホのナビと連携させれば、自動車で移動している最中でもアポイントの変更ができますし、音声通話でミーティングを始めることだってできます。

 そうしたことは、今でも十分に可能なことです。ただしそれができていないのは、適切にサービスを組み合わせるのが難しいこと、そして連絡をとるべき人や案件の詳細な情報を、結局人が覚えていて判断せねばならない部分が多々あるからです。スケジュール帳やアドレス帳、ファイルフォルダー内にデータはあっても、それを生かすには人間が考えなくてはいけないというのが現実です。

 マイクロソフトは、そこを改善することが仕事の効率化につながると判断しています。そこで今回、大きくとり扱われたのが「マイクロソフト・グラフ」という技術です(写真4)。

 「え? グラフ作成ソフト?」と思われそうですが、そうではありません。マイクロソフトは2014年に、マイクロソフト・オフィスのツール群を横断するオフィス365向けの「ゲートウエイ」とも呼べる技術を発表しています。人はワードやエクセル、パワーポイントなどで文書を作り、メールやグループウェア、SNS、メッセンジャーなどでコミュニケーションをします。その履歴や関係性をクラウドサービス側で把握し、活動や人々との関係を可視化してビジネスの円滑化を図る、というのがマイクロソフト・グラフです。ここでいう「グラフ」とは、人と人の結びつきの関係を示す「ソーシャルグラフ」のこと。ソーシャルグラフの解析と、その人に必要なサービスとデータを常にわかりやすく提示する「社内ポータル」のようなものを作る技術です。この技術はこれまで、主に企業向けに使われてきました。従って、「マイクロソフト・グラフ」という名前のアプリがあるわけではありません。

 企業内の開発者向けには、このマイクロソフト・グラフを活用し、よりわかりやすく、場所・サービスを横断して使えるようシステム構築のアイデアを練ってもらいたいというのが、マイクロソフトのビジョンです。先ほどの作業場の安全性に関するデモも、結局は同じ観点に基づいて作られています。AIがツールとして存在する今、データを集めるだけでなく、それを人に使いやすい形、コミュニケーションしやすい形で提示するためのITを活用すべきなのです。マイクロソフトAI部門のトップであるハリー・シャム上級副社長は、「マイクロソフトのAIは人の知性を拡張するもの」と説明しました。先日、音声認識によって言葉を別の言語に翻訳する「マイクロソフト・トランスレーター」を本連載でご紹介しましたが、それも全く同じ発想に基づくものです。

ウィンドウズ10は「AI」「デバイス連携」を軸に進化

 では、個人にとってはどうでしょう? 企業がシステム開発しないと使えないシステムならば、個人には縁遠いように思えます。

 しかし、そうではないのです。…

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