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 ニセアカシアが咲きほこる。鳥取砂丘のまわりにもJR山陰線で西に向かっても、ニセアカシアの並木は続く。まるで白いブドウの房が何百個もぶら下がる。甘い香りが漂う。

 昔から気になっていることがある。「ニセアカシア」という名前。失礼だよね、可哀想だよね、「ニセ」なんて。「サクラソウモドキ」も失礼だと思う。「モドキ」が問題。植物の名前、時々同情することがある。例えば「ドクダミ」。白い十字の花弁、可愛い花。それに「ドク」は可哀想。人間なら訴えを起こし、謝罪と補償金を要求するだろうに、ドクダミは無言。

 傷ついている植物たち、いるだろうな。パラパラと図鑑をめくってみた。「ボロギク」「ヤブレガサ」「ヘクソカズラ」。「ヤブジラミ」、なんか人が離れそう。他にもある。「マムシグサ」「ユウレイタケ」。もっと可愛い名前を付けてやれよ、と思う半面、ぴったりとした名前と思ったりして、こっちが謝罪だ。「クズ」も「人間のくずだ」と語音が同じで誤解しそう。「サギソウ」もきれいな花なのに「振り込めさぎにご用心」と誤解しそう。「ウドの大木!」があるので、つい「ウド」へも失礼な態度を取りそうになる。

 「アカシアの雨にうたれて」と1960年に西田佐知子さんが歌ったアカシアは、本物のアカシアではなくニセアカシアだった、と。本物って、と調べると、黄色の小さな金平糖が鈴なりになったようなミモザ(ギンヨウアカシア)のことのようだ。別の図鑑には「アカシアとはニセアカシアのこと」と。頭、混乱。ニセアカシアの別名は「ハリエンジュ」と。なんだお洒落(しゃれ)な名前、ニセなしの名あるじゃん、と思ったが、やっぱり「ニセアカシア」の方が僕は好き。

<アピタル:野の花あったか話>

http://www.asahi.com/apital/column/nonohana/(アピタル・徳永進)

アピタル・徳永進

アピタル・徳永進(とくなが・すすむ) 野の花診療所医師

1948年鳥取市生まれ。京都大学医学部卒業。京都、大阪の病院・診療所を経て、鳥取赤十字病院の内科医に。2001年12月、鳥取市内にてホスピスケアのある有床診療所「野の花診療所」を始め、さまざまな死の形を臨床から報告。鳥取市にセミナーハウス「こぶし館」を建築し26年になる。

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