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 朝日新聞デジタルのアンケートには、沖縄のアメリカ軍基地について「沖縄を犠牲にしてまで必要だとは思わない」「なくしていくべきだ」という声が多く寄せられました。沖縄タイムスで長年、米軍基地を取材し、今は沖縄在住のフリージャーナリストの屋良朝博(やらともひろ)さん(54)に、その声に目を通して考えたことを尋ねました。

■地理的に集中仕方ない

 日本の安全に不可欠だ、必要性を検証し減らせるものは減らすべきだ、を選んだ人の声です。

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●「沖縄県は朝鮮半島や中国大陸に近く防衛の要衝であるため、基地が沖縄県に集中することはやむを得ないことであり、差別ではないと思うが、沖縄県の住民に多大なる負担を掛けていることは事実であるので防衛上問題の無いものに限っては、減らせる基地は減らし、本土に移転できる基地は移転し、負担を少しでも軽くするとともに、住民への手厚い補償を行っていくことが重要であると思う」(福岡県・10代男性)

●「なぜ、どのくらい基地が必要なのかの議論がないまま、辺野古移設だ、反対だという意見がとびかっても、判断できない。政府もマスコミも、そこを詳しく説明してほしい。政府には説明責任があるはずだ」(神奈川県・40代女性)

●「沖縄出身です。福岡では、周りの人たちは沖縄問題を考えることもなく、毎日を楽しく過ごしています。米軍基地が理不尽な形で集中している沖縄を知っているだけに、憤りと諦めを感じています。沖縄では、うちなーとヤマトを分けて考える人が増えています。琉球併合に差別の起点を見いだしています。ヤマトでは多くの人が安保や基地が必要だと思っているのだから、引き取るのは当然ではないでしょうか。その上で、我が国の安全保障について自分のこととして考えるべきだと思います。差別をやめてください」(福岡県・40代男性)

●「沖縄の米軍基地の大半を占めている海兵隊の不必要性を周知し、県外移転させることで普天間・辺野古問題は解決すると共に基地負担の割合も大幅に改善する。海兵隊とは何ぞやということを国民が知らなさ過ぎるのでまずはそこから」(沖縄県・20代男性)

■「米軍が抑止力」的外れ

 沖縄のアメリカ軍基地について、沖縄を犠牲にしてまで必要だと思わない、なくしていくべきだ、という回答が多く寄せられました。その声です。

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●「米軍基地が沖縄に集中している根拠を政府は十分に説明できていない。しかも、現在、米軍海兵隊基地が日本に必要かも疑問であるので普天間の代わりの基地が本当に必要かどうかも十分な説明が必要だと思う。その結果を踏まえて米軍基地が日本に必要なのか、どこにどれだけ必要かも検討した上で実行されるべきだと思う」(神奈川県・50代男性)

●「沖縄のアメリカ軍基地の中でも海兵隊の駐屯地について特に疑念があります。アメリカ国内において海兵隊の位置づけはどうなっているのでしょうか? 昨今の戦争形態を考えると海兵隊はその役割を終えていると思えます。不要となった海兵隊の存在のために沖縄が利用されているとするとたまったものではありません」(東京都・60代 男女どちらでもない・決めたくない)

●「我が国の防衛上絶対に必要か、必要であればどの程度どこに必要かの議論がない。沖縄だけの負担が過大なのは問題であり、沖縄の差別につながっている」(神奈川県・70代女性)

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●「沖縄に基地を置く軍事的合理性は何もありません。あるのは政治的理由だけです。沖縄以外の地域が嫌だと言っているからにすぎません。どの政権も沖縄を『捨て石』に位置付けている証しです。その考えは沖縄戦以来、何も変わっていません。これを差別と言わずになんというのでしょうか。歴代政権の中でも安倍政権は突出して強権的です。辺野古新基地、自衛隊の南西シフトを考えると、沖縄が再び戦場になる懸念は決して杞憂(きゆう)ではありません」(沖縄県・50代男性)

●「日本に米軍基地が本当にこれだけ必要か論議すべきだ。特に海兵隊は沖縄にいる必要は全然ない。1年の半分は海外に展開している。政府の言う『抑止力』は的外れである。沖縄から海兵隊がいなくなれば大幅な削減になる。海兵隊が必要でほしい都道府県はどうぞ。差し上げます」(沖縄県・60代男性)

●「本土・沖縄の関係では『本土が引き受ける』のが筋。しかし、結局進んで引き受ける所はないので、基地自体を限りなくゼロにしていく以外に選択肢はない。地政学上沖縄に基地があることが重要という論は一見もっともらしいが、アナクロな陣地構築型軍事観はテロの時代に何の役にも立たない。要は『東北だからまだよかった』と基本的に同じで、トカゲの頭=東京を守るため一番遠い沖縄を尻尾にせよとしか言ってないわけで、国は『沖縄でできたこと』は他の問題では必ずどこの地方でも同様にやるでしょう。今こそ『沖縄は私だ』とすべての国民が気付かなくてはいけないと思います」(東京都・60代男性)

●「まず、海兵隊については、有事でも制海権、制空権を確保してからでないと出撃出来ず、そもそも日本の安全保障上の抑止力になり得ない。また、仮想敵国が長距離対地ミサイルを多数配備する現在、地上に固定された基地は、有事の際は仮想敵国による先制攻撃の標的になるだけで、抑止力としての存在意義はなくなりつつある。在日米軍も、日本有事が近いと判断すれば、在日基地から兵力を退避させると考えられる。従って在日米軍基地は日本の安全保障にとって、従来のような存在意義は無く、限りなくゼロに近づけるのが望ましい。とりわけ海兵隊基地は即刻閉鎖すべきで、辺野古基地建設も即刻中止すべきである」(埼玉県・50代男性)

■「安保」は軍事だけではない フリージャーナリスト 屋良朝博さん

 沖縄の米軍基地は「地政学的」に重要――という意見があります。その意味をどれだけの人が理解しているでしょう。そもそも「安全保障」とは何か。漠然としたイメージで沖縄の米軍が日本を守っていると考えていないでしょうか。軍事は安全保障の一部に過ぎない。沖縄に基地があるという「態勢」が安心につながるのかも知れませんが、大事なのは危機に際して互いに協力し合う「体制」ではないでしょうか。

 沖縄の米軍基地で一番面積が大きいのが海兵隊であり、辺野古に建設されるのも海兵隊基地です。しかし米軍再編により主力部隊はグアムに移転し、実戦兵力は第31海兵遠征部隊(MEU)という2千人規模の比較的小さな部隊だけになります。年間のかなりの期間、長崎県・佐世保基地に配備されている艦艇に乗り、共同訓練などのためアジア太平洋へ遠征します。沖縄を拠点とする絶対的な理由はなく、グアムや豪州、ハワイ、カリフォルニアへ移駐しても任務・運用に支障はありません。それにより普天間も辺野古の埋め立ても不要になります。

 冷戦後の安保課題は「9・11(テロ対策)」「3・11(災害)」といわれており、海兵隊も近年、人道支援・災害救援活動に重きを置いています。災害救援では自衛隊もすぐれた能力、実績を持っている。仮に海兵隊が国外へ移転しても、この分野で日米がより積極的に協力し合うことで、両国の絆は一層深められるのではないでしょうか。

 2013年、米比合同軍事演習「バリカタン」の一部に中国軍が初参加しました。14年には米タイ両軍が主催する東南アジア最大級の多国間合同軍事演習「コブラゴールド」に正式に初参加、そして環太平洋合同演習(リムパック)にも初参加しています。13年12月、安倍首相の靖国参拝に米政府は「失望した」と反発しました。中国を引きこもうとする米側の努力に水を差し、アジアの安保環境を悪化させることだったのではないでしょうか。

 海兵隊はもともとは「本土」に駐留していましたが、基地反対運動が高まったことで、日米同盟の「維持管理」のために沖縄に移駐しました。沖縄の声に耳をふさげば、平和と安全が得られるわけではないし、「地政学」という言葉にあまり意味はない。無関心から脱し、本当の意味の安全保障を議論するべきではないでしょうか。(聞き手・川端俊一)

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 ◆14日配信の記事のグラフ説明に「属性質問で『沖縄県』を選んだ」と表記しました。アンケートでは毎回、「都道府県」を尋ねています。「お住まいの」と明記していなかったため、「出身」を選ばれた可能性もあると考え、上記のようにしました。わかりにくいとのご指摘を受け、アンケートの質問に「お住まい」と明記するようにしました。

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