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 アメリカ軍基地の県内移設工事が本格化する中、復帰45年を迎えた沖縄。この機に合わせ、沖縄と米軍基地について尋ねたアンケートに、これまでで4番目に多い2637回答が寄せられました。真剣な議論に、最初の予定を変更してこの3回目の紙面を組むことにしました。「本土」に突きつけられた「差別」という重い指摘を考えます。

■民意出ても認められず

 沖縄にアメリカ軍基地が集中することについて、「本土」による沖縄差別だとの声が多数を占めました。その声の一部です。

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●「歴史を見ても、今の政府の態度を見ても、沖縄の人たちが味わってきたつらさは察するにあまりある。公然と差別され続けるとはどれだけつらいのか。差別している側に何の罪悪感がなく、味方が少ないのはどれだけつらいのか。想像できるのは教室レベルの出来事でしかないがそれでもつらい。なんとかそのつらさを日本の国みんなで分けあって、減らしていけたらとぼんやりと思うことしか出来ないのが悔しい」(東京都・20代女性)

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●「軍事基地がまず攻撃対象にされるという点で、防衛には役立っていない。『本土』の人間が『必要』と考えるのであれば、沖縄だけに集中させるべきではありません。原発と同じで、『身近に見えない』ところにあることで『厄介払い』した気になっているのではないかと考えます」(大阪府・40代男性)

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●「辺野古移設を強行する政府の姿勢は、明らかに沖縄軽視だと思います。そうした権力者の差別的な態度や発言が沖縄と本土の溝を深めている。私は沖縄出身ですが、昨年の機動隊員による『土人』発言以降、沖縄出身であることを公言するのが怖くなってしまいました。誤った知識や理解不足から沖縄を攻撃する人が増えることに危機感を抱いています」(愛知県・30代女性)

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●「他県では反対すれば認められるのに沖縄では選挙で結果を出して民意を示して反対しても正当な方法で反対しても認められない。しかたがなく座り込みなどをすると逮捕される。沖縄も他県と同じ扱いをするのが当然だ」(沖縄県・40代女性)

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●「辺野古に代替基地を建設すべきだという意見の方は地理的位置とか、基地経済で潤っているとかという固定観念にとらわれて思考停止の状態なのですね。同じ日本でも虐げられた歴史を持つ地域とそうでない地域の温度差は埋めようがないのでしょうか」(沖縄県・60代女性)

■「傲慢な無意識」ないか

 「差別」について寄せられたその他の声の一部です。

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●「占領下に土地を強制的に接収された沖縄が返還後も放置されている状況は明らかに不条理。愛国を唱える保守派がこの米国隷属的状況を肯定するのは奇妙だし、戦中のように沖縄の『日本への忠心』を要求するのであれば、せめてその負担を全国で担うしかないのでは。そういう議論が保守派から声高に聞こえないように見受けられるのは、沖縄を異民族として差別する『ヤマト』の傲慢(ごうまん)な無意識があると指摘されても仕方ないし、実際そうなのではないかと危惧している」(東京都・40代女性)

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●「私の住む神奈川県内でも米軍ジェット機墜落事件で幼子2人と母親が命を奪われましたし、基地被害は現在も続いています。この沖縄差別の論理は結局、沖縄県民とそれ以外の住民を分断することにつながるのではないでしょうか。沖縄でも沖縄県以外でも、基地はいらないのです」(神奈川県・60代男性)

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●「20代の沖縄県民です。基地問題に関しては、沖縄県内部においても『賛成』『反対』のような二元論的意見だけではなく、多様な意見があると実感しています。今のメディアのやり方では正確に把握できない意見や本音を、掘り起こすようにするべきと考えます。また、結論ありきの議論ではなく、柔軟かつ自由な議論をすべきであり、実のところ基地問題の最大の課題はそこなのではないかと考えます」(沖縄県・20代男性)

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●「沖縄差別は全く当たらない。昔基地を作りやすい所に建設した経緯はあるかもしれないが、現在の東アジアの状況を考えると沖縄の位置は非常に重要で、日本全体や東アジアの安全保障の要となっている。言葉でごまかさずに負担をしている沖縄にはそれ相応の対価を約束し、基地負担の重要性を国民全体で理解するために丁寧に説明を続けることが必要だ」(沖縄県・30代男性)

■基地引き取り運動 苦悩しつつ 本土「ひとごと」 疑問と憤り

 「なぜ沖縄は無視されるのか。ヤマトの人にとってはひとごと。当事者意識を持って国民的な議論をしてほしい」

 今月、大阪市大正区で「基地引き取りで辺野古を止める」と題した講演会がありました。話をした那覇市在住の司法書士、安里長従(ながつぐ)さん(45)は、4月末に沖縄で開催された基地の「県外移設」を議論するシンポジウムの実行委員の一人。沖縄の米軍基地を「本土」(ヤマト)で引き取るよう訴えました。

 安里さんを招いた主催団体のひとつ「沖縄差別を解消するために沖縄の米軍基地を大阪に引き取る行動」は2年前に結成され、大阪府内の空港など9カ所を普天間移設の「候補地」に挙げ、その地元で「基地を引き取ろう」と呼びかけています。

 結成メンバーの一人、松本亜季さん(34)は大阪生まれ。名護市辺野古での基地建設に反対し、十数年前に現地での座り込みにも参加しました。そのころ、基地の「本土」移設を求める声が沖縄にあることを知りました。自分の町に基地を受け入れるなんてできない――。地元の人に「ショック療法のようなもの」と言われ、その時は少し安心したそうです。

 大阪で辺野古基地反対の運動を続けながらも、「基地引き取り」を求めるウチナーンチュ(沖縄の人)の言葉には、「いやです」と答えざるを得ませんでした。沖縄の現実が知られれば基地建設は止まるはず、と信じてもいました。

 が、運動を何年続けても止まる気配はない。逆に多くの日本人は、基地は沖縄に押し込めておけばいい、と考えているようにも思えたといいます。悩んだ末、「引き取り」運動にたどり着きました。「日本人の大半が日米安保を認めている。ならば、その負担を避けるべきではありません」

 大正区でウチナーンチュの文化の拠点「関西沖縄文庫」を主宰する金城馨さん(64)は沖縄で生まれ、幼児期から関西に住んでいます。沖縄との「連帯」をうたう、「本土」での基地反対運動に疑問を抱き始めたのは1990年代でした。

 「沖縄に基地を押しつけていることを『日本人』が自覚しなければ、連帯などあり得ない」。「引き取り」を求めるのは、「基地は『日本人』の手でアメリカに返さなければならない」と思うからで、「本土」側の無意識によって差別が継続されていると考えています。

 「引き取り」には、沖縄の中にも異論はあります。沖縄の「うるま市具志川九条の会」共同代表、仲宗根勇さん(76)は政府側が普天間の移設先について「辺野古が唯一の選択肢」として建設を強行することが差別そのものと考えています。でも「引き取り」は疑問、とも。

 「実現するならありがたいが、日米安保そのものを問わずに引き取り運動を行うのでは現実的な問題解決にはならない」

 沖縄の現実を思い、苦悩する「本土」の人はまだ多数派とは言えません。「引き取り」を求める声の底には基地問題を「ひとごと」として目を向けないことへの疑問と悲憤があるのです。(川端俊一)

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