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 東京にある北海道出身者専用の学生寮「北海寮」が人気を集めている。少子化もなんのその、入寮試験の倍率は2~3倍が当たり前という「狭き門」だ。創設から84年。長きにわたる人気の秘密とは――。

 北海寮は練馬区石神井(しゃくじい)台の住宅街にある。5月20日の土曜日の夕方。西武新宿線武蔵関駅周辺を、72人の寮生のほぼ全員が練り歩いた。62回目の寮祭に伴う恒例のあんどん行列。学ラン姿の1年生は、なじみの居酒屋「丸忠」の前で「フレーフレー」と叫んだ。これも恒例の「応援演武」だ。

 法政大1年の泉尚志さん(18)=札幌北高卒=は「今日は仲間と一緒に頑張りたい」と気合十分。丸忠店主の蓬田俊さん(80)は「寮生とは30年以上の付き合い。若い感覚を教えてくれる」と笑顔で語った。翌21日には寮で地元住民に北海道の食を振る舞い、交流を深めた。

 北海寮は1933(昭和8)年に、関東で学ぶ北海道出身の学生の経済的負担を減らすことを目的に創設された。93年には鉄筋コンクリート3階建ての今の寮が完成。72部屋ある個室(9・9平方メートル)の家賃は月6万5千円で、日曜を除き朝夕2食が提供される。現在は道内30高校出身の72人が首都圏の27大学(昼間部)に通う。OBは1600人超に及ぶ。

 運営するのは公益財団法人「北海道在京学生後援会」(塚越孝平理事長)。卒業する寮生の数を定員として、毎年3月に入寮試験を実施する。2016年春は卒寮生が多く、大学の合格者が少なかったため、創設以来初の定員割れとなったが、近年の入寮試験の倍率は1・5~3・5倍ほどの人気を誇る。塚越理事長は「安心と安全が魅力なのだろう」とみている。

 寮祭で応援団長を務めた明治大学1年の石川龍生さん(18)=函館中部高卒=は「母に紹介され、面白そうと思った。毎日が修学旅行のようで楽しい。上下関係は厳しいが、面白い先輩もいる」と寮生活を語る。父の彰さん(59)は「同郷の寮生たちと生活することで、相手の気持ちを考えられる人間になってほしい」と願う。

 今後、寮生確保が難しくなる可能性もある。文部科学省の「学校基本調査」によると、東京の大学に進学した道内高校出身者は、06年度の1854人が16年度は2155人に増えた。だが、男子の割合は61・4%から55・3%に減少しており、実数は頭打ちだ。

 塚越理事長は「今のところは十分な学生数が集まっている」と話すが、大学院生や女子学生の受け入れも検討していくという。(今泉奏)