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 熊本地震に関する検索データを分析し、支援や将来の防災にいかす道を探る――。ボランティアや学者など被災地で活動する専門家が集い、そんなテーマで意見を交わした。被災者から直接聞いた声と、検索というビッグデータを突き合わせた結果、新たなニーズが浮かび上がる一方で、現場で強いニーズがあるのにデータには表れない事例も発見。「検索できる環境にない」「調べるべき言葉を知らない」といった情報格差の問題に対応する必要性も浮かんだ。

 「熊本地震×検索データ 支援・防災にいかすには?」と題し、5月28日に熊本大工学部で議論をした。参加したのは、被災地の仮設住宅で住民の聞き取り調査などを続ける熊大の研究者、被災者の法律相談をデータ分析して活用する弁護士、大規模な避難所を運営した地元のYMCA、全国21の災害支援団体でつくる「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」、朝日新聞記者らの5チーム。

 事前にそれぞれの問題意識に基づいて検索大手ヤフーのデータを分析。熊大の研究者は「支援」という語句とともに「住宅金融支援機構」や「日本学生支援機構」が多く検索されていたとし、「住宅ローンがある子育て世代や大学生など若い世代が支援の情報を探していた」と被災者のニーズを推測した。

 一方で、「益城町」とともに検索された語句の中に「災害公営住宅」が少なかったことに注目。同町での聞き取り調査では多くの被災者が「災害公営住宅」に関心を示していたとし、「ネットで検索をしない高齢者や、仮設住宅などでネット環境をなくした被災者のニーズが表れていないのでは」と指摘した。

 YMCAも「地震後に熊本では精神科受診者が増えたのに、データに表れていない。データに出にくい分野もあるのでは」とし、JVOADは「地域の困りごとに関する情報はSNSに流通しているのかもしれない」との見方を示した。

 検索データでは浮かび上がらない被災者のニーズや課題に、どう対応すべきか。弁護士のチームは、検索はあらかじめ言葉を知っているからできるとした上で、「データに表れない言葉は『知らない』のではないか。被災者にとって欠かせない支援制度を平常時から学ぶ『知識の備え』が重要だ」と提案した。熊大の研究者は「検索データに表れていない語句に着目することも重要で、情報が本来必要としている被災者に届いていないシグナルにもなる」と語った。

 検索データの活用について、「結果の分析だけでなく、急上昇している語句を抽出する仕組みができないか」との意見も出た。被災者のニーズをいち早く知り、行政などの対応を早めるためだ。ヤフーは「将来の減災のために、検索データを生かせる取り組みを考えたい」と応じた。

 朝日新聞のチームは、検索データの動向変化と連動した災害ポータルサイトを提案。災害時、数多く検索されている話題に関する過去の新聞記事を、すぐに見られる仕組みを披露した。また、各地の被害状況や被災者のニーズを、記者とともにボランティアらが入力して素早く社会に届ける仕組みも提案した。

 計量政治学が専門の政治学者でもある熊本県の蒲島郁夫知事は会場で議論を聞き、「ヤフーの検索データのようなマクロのデータ分析と、ボランティアやメディアが現場で集めるミクロの分析が共存してこそ、よりよい災害対応ができる。経験をすべて動員して次の災害に備えることが大事だ」と評した。(福井悠介、江崎憲一)