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 戦前の1935(昭和10)年に、沖縄で大阪朝日新聞(当時)の記者が撮ったネガ277コマが見つかった。市場や漁、農作業など、人々の暮らしぶりが写し取られている。太平洋戦争末期の沖縄戦で、戦前の沖縄の写真の多くは焼失しており、専門家は「大変貴重な資料」と評価する。

 朝日新聞大阪本社の倉庫内で眠っていたネガを、社員が偶然見つけた。デジタル化し、傷やカビを修復。82年前の沖縄が鮮やかによみがえった。

 撮影したのは大阪朝日新聞のカメラマン藤本護氏(46年、40歳で死去)。社会部記者の守山義雄氏(64年、53歳で死去)とともに沖縄を訪れ、糸満や名護の漁業などを取材した。大阪朝日新聞に、35年7月に連載「海洋ニッポン」が10回掲載されており、写真の一部も載っている。

 見つかったネガには、漁業の様子だけでなく、にぎわう那覇の市場や、古謝(こじゃ=現・沖縄市)のサトウキビ作り、軌道馬車や人力車などの移動手段を含む当時の生活の様子が記録されていた。

 写真については、記事の相互提供や人材交流などをしている地元紙・沖縄タイムスとの共同企画とし、朝日新聞から沖縄タイムスに写真を提供。沖縄タイムスの取材により、多くの撮影場所が特定され、当時の様子が詳しくわかった。(吉田拓史)

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 《日本写真著作権協会長、田沼武能(たけよし)さん(88)の話》 沖縄の人が撮った戦前の写真は戦災で多くが失われている。写真家の木村伊兵衛も撮っているが、東京の工房が戦火に遭い、残っているのは36枚フィルムが20本ほど。300枚近い写真が見つかったのは非常に珍しい。背景や衣服といった「時代」がしっかり写し込まれていて、当時を知る記録としてとても貴重だ。