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 以前にも解説しましたが、ペニシリンから派生した系列の抗菌薬はその構造式の中に「βラクタム」という部分を持っています。このβラクタムが細菌の細胞壁を壊すことで菌を殺すことができるのです。

 このβラクタムによって菌を殺す抗菌薬のことを「βラクタム系抗菌薬」と呼び、その中には「ペニシリン系抗菌薬」、「セフェム系抗菌薬」、「カルバペネム系抗菌薬」の3種類があります。

 一方、抗菌薬には一部の菌にしか効かない「狭い抗菌薬」と、多くの種類の菌に効く「広い抗菌薬」があることを以前お伝えしたと思います。

 大まかに言って、ペニシリン系抗菌薬は「狭い抗菌薬」、セフェム系は「狭い~やや広い抗菌薬」、カルバペネム系は「非常に広い(ほとんどの菌に効く)抗菌薬」と言えます。

 現在、病院の点滴治療において最もよく使われるのは、ペニシリン系かセフェム系抗菌薬です。しかし、ペニシリン系やセフェム系では効かない耐性菌が最近非常に増えてきています。ペニシリン系やセフェム系が持つβラクタムを分解してしまう酵素である「βラクタマーゼ」をもつ菌が増えているのです。

 それでも、カルバペネム系抗菌薬のβラクタムはそう簡単には分解されないので、ほとんどの種類の菌に効きます。それだけに、カルバペネム系抗菌薬は「切り札」としてのみ使用したいもので、乱用されてはいけない抗菌薬なのです。

 しかし、繰り返しますが、ペニシリン系やセフェム系抗菌薬のβラクタムを壊してしまう耐性菌が最近非常に増えてきており、その代表が、「ESBL産生菌(拡張型βラクタマーゼ産生菌)」や「AmpC型βラクタマーゼ産生菌」と呼ばれる細菌です。

 これらの菌には、ごく一部の抗菌薬か、切り札であるカルバペネム系抗菌薬しか効かないのです。

 

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座准教授 齋藤紀先)