【動画】過去のJSEC入賞者からのメッセージ=朝日教之撮影
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 科学の自由研究のコンテスト「高校生科学技術チャレンジ」(JSEC=ジェイセック)が今年度、第15回の節目を迎えます。科学的な課題を自ら見つけて解決に取り組み、国際的にも通用する人材を育てようと、朝日新聞社とテレビ朝日が主催しています。第15回の作品募集を前に、これまでの入賞者の活躍ぶりなどを紹介します。

パズルがヒント、「地球救う」診断法を 第3回最優秀賞→放射線科医師 越野沙織さん(28)

 壇上に並んだ6人のノーベル賞学者らに向かって、各国の高校生が質問をぶつけていく。日本の女子高校生がマイクの前に立った。

 数学の可能性について尋ねる彼女に、1人の学者が答える。「数学的な考え方は、生物や自然科学に応用できる」

 2006年、米インディアナポリスで開かれた高校生の国際科学コンテスト、ISEFでの一コマ。今も動画投稿サイトで見ることができる。

 数学の研究で、JSECから日本代表としてISEFに出場したこの高校生は、まさに助言通りの道を歩んでいる。

 東京大学病院放射線科の医師、越野沙織さん(28)。1日に40人ほどのCT検査に立ち会う。最先端のMRIの研究にも携わる。

 愛知県の南山高校女子部1年生だった05年、第3回JSECで最優秀賞を受賞した。研究タイトルは「イラストロジックは地球を救う!」。テレビ番組の名前から取った。

 イラストロジックは格子状のマス目を使ったパズルだ。与えられた数字を手がかりにマス目を塗っていくと、イラストが浮かび上がる。6歳で始め、「速く解く公式」を10歳の時に見つけた。

 小学5年のころ、成長痛がひどくて歩けなくなり、CT検査を受けた。見せられた白黒の画像が「イラストロジックと重なった」。

 データを画像に変換する点ではイラストロジックもCTも同じ。パズルの公式を応用すれば、画像処理を速め、次世代CTの開発につながるのではないか、という仮説を立ててJSECに応募した。何度も撮影せず、1回で精密な画像が得られれば、CTで患者が受ける放射線量が減り、正確な診断にも結びつく。「地球を救う!」にはそんな思いも込めた。

 その後、東京医科歯科大に進学、米英への留学も経験したが、JSECで知り合った仲間や研究者との交流は今も続いている。「すべての原点がJSECです」という。

 12年前、JSECの受賞を伝える新聞記事は「ずばり、夢はノーベル賞だ」と結ばれている。「もちろん今も目指しています。日本人女性で第一号になりたいです」。屈託のない笑顔をみせた。

世界の見え方変化、社会的視点もてた 矢倉大夢(ひろむ)さん(20)

 最初の研究は、スマートフォンなどの基本ソフト「アンドロイド」に感染するウイルスを見つける仕組みでした。高1の夏休みのリポートだったんですが、学校でJSECのポスターを見て、せっかく頑張ったんだからと応募しました。

 国際大会のISEFにも出場して、世界の見え方が大きく変わりました。「人の生活にどう役立つのか」「世界をどう良くするのか」。日本とは違った質問を受け、社会的な視点を持つようになりました。

 高1の授業で学んだ哲学にも影響を受けました。世界とは何か、人間とは何か。コンピューターを使ってアプローチできないかと思って始めたのが、次の研究です。人間の感性に迫ってみようと、ネットにアップされたボーカロイド(音声合成技術)の曲の「さび」を見つけるシステムを開発しました。

 人間への興味は広がって、いま取り組んでいるのはコンピューターを使って人を育てること。2年前から、「TEAMBOX」という会社で企業幹部向けの人材育成プログラムに携わっています。セキュリティーや音楽情報の研究も、大学などで続けています。

 研究の世界は、失敗してもポジティブなフィードバックが得られます。何もしないことには始まりません。勇気を持ってアクションを起こしましょう。

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 筑波大3年生、コンサルティング会社「TEAMBOX」取締役。灘高(神戸市)在学中の2012年、第10回JSECで文部科学大臣賞など、第11回でも科学技術政策担当大臣賞などを受賞し、14年のISEFでブルーノ・ケスラー財団賞を受賞した。

発信するチャンス、信念貫いた3年間 西田惇さん(25)

 高校の学園祭が近づきクラス全体がにぎやかになる9月、1人そわそわした気持ちで、JSECに応募しようと電子回路や測定機器と向き合っていた日々を思い出します。

 うまく発表できるだろうか、そもそも1次審査を通過できるのだろうか、という大きな不安。世界に向けて自分の研究を発信するチャンスをつかめるかもしれないという、小さいながらも確かな興奮。その両方を胸に3年間、JSECに挑み続けました。

 2年目には国際大会ISEF代表に選ばれながら、新型インフルエンザ問題で派遣中止という悔しい思いもしましたが、3年目で出場の夢がかないました。

 現在は大学院の博士課程に在籍しつつ、北京にあるマイクロソフト社の研究機関で当時と同じ分野の研究を続けています。人間の筋肉の「生体信号」を利用して、機能回復訓練などを支援するための研究です。

 高校生から大学院生、日本から海外へと立場はすっかり変わりましたが、当時と変わらず自ら決めた方針を信じ、挑戦し続けることが大切であると、日々身をもって感じています。

 応募を考えている皆さんが、それぞれの信念を持ち、JSECという機会を最大限に活用して世界の舞台に挑戦されることを願っています。

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 筑波大大学院生(人間情報学)。2007年、奈良女子大付属中等教育学校の3人で応募した第5回JSECでJFEスチール賞。第6回で科学技術振興機構賞、第7回で科学技術政策担当大臣賞など受賞。10年のISEFでは材料工学・バイオエンジニアリング部門で優秀賞3等などを獲得した。

国際大会で躍進 初の連続入賞「今も励みに」

 JSECの上位入賞者は翌年5月、米国で開かれるインテル国際学生科学技術フェア(ISEF=アイセフ)に日本代表として出場する。これまでに15研究がグランドアワードと呼ばれる主要な賞を獲得しているが、うち9研究は2014年以降と、近年の活躍ぶりがめざましい。

 ISEFは1950年に始まり、今では世界の75を超す国と地域から選ばれた1700人以上が、約20の部門で研究成果を競う。賞金総額は400万ドル。厳正な審査の一方で、出場者同士が交流するピンバッジ交換会やダンスパーティーのほか、地元の小中学生らが訪れる一般公開もある。

 そんな「科学の祭典」で2015年、16年と、日本代表として初めて連続入賞したのが市立千葉高生だった市毛貴大さんだ。

 1年目はモーターの回転速度を制御する研究で、機械工学部門の4等を獲得した。「審査で実用性について問われることが多かった」という経験をもとに、2年目はモーターの省電力化に絞って研究。日本勢で歴代2人目となる部門最優秀賞に輝いた。

 この春、早稲田大に進学した市毛さんは「外国人の専門家と自分の研究について英語でディスカッションでき、直接評価してもらえたことが、今も励みになっている」と振り返る。

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 〈高校生科学技術チャレンジ(Japan Science&Engineering Challenge)〉 通称JSEC(ジェイセック)。高校生を対象にした科学の自由研究のコンテスト。大学教授らの専門家が審査する。最終審査は、研究内容を大きなポスターにして掲示したブースで発表、審査員の質問に答えるため、プレゼンテーション力も問われる。上位入賞者は米国で開かれる世界大会「Intel ISEF(アイセフ)」に派遣される。

 ここ数年は約250件の応募があり、個人とチームを合わせて約500人が参加している。

応募受け付けは9月から

 対象は高校生・高等専門学校生(3年まで)で、理数分野の学術的な研究、独創的なフィールド調査や装置の試作など、幅広い分野の自由研究の応募が可能です。上位入賞者を来年5月に米国で開かれる国際大会に派遣します。

 ◇応募方法 個人もしくはチーム単位(3人まで)。研究内容などをまとめてホームページ(http://www.asahi.com/jsec)から。受け付けは9月1日[金]~10月2日[月]

 ◇審査・表彰 予備審査、1次審査を通過した作品を12月9日[土]、10日[日]に東京・日本科学未来館で最終審査し、表彰

 ◇問い合わせ JSEC事務局(03・3547・5569、平日午前10時~午後5時=正午~午後1時を除く。メールjsec2017@ad.asakonet.co.jp)

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