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 JR九州は、筑肥線の九大学研都市駅(福岡市西区)で、新たなホームドアの実証実験を今秋から始める。扉の代わりに左右から伸びる4~5本のバーを組み合わせ、転落を防ぐ仕組みで大幅な軽量化とコスト減につながった。

 考案したのは、運転シミュレーターなどを手がける「音楽館」(本社・東京)の向谷実社長(60)。フュージョンバンド「カシオペア」のキーボード奏者だった向谷さんが、JR九州の青柳俊彦社長との雑談中に生まれたアイデアが発端だった。完成までの道のりや安全への思いを聞いた。

 ――ホームドアを思いついたのは。

 アイデアが思い浮かんだのは2015年の初め。シミュレーターでお付き合いのあったJR九州の青柳俊彦社長と雑談をしている時に、「ホームドアは全部、立派で重い鉄扉型じゃないとだめなのか」という問いかけがあった。そこで、手の左右の指を交差させ、「こうすればいいんじゃないんですか」と簡易型のアイデアを言ったんです。ローカル線も多いJR九州では、コスト的に立派なものは厳しい中で、「面白いね」となった。

 会社に戻り、社員と相談して、アイデアをもとにした完成予想図を作り翌日、JR九州に送ったんです。国土交通省に飛び込みで行き、ホームドアについての指針も見せてもらった。並行して筑肥線でホームドア設置の計画があると言うのを聞き、JR九州でプレゼンもした。ただ、ホームドアでは僕らに実績もなく、そのときは実現しなかった。

 それでも「これは役に立つ」と思い、特許も出し、プロトタイプ(原型)を作って15年11月、鉄道関連の最新の機材やシステムなどを集める「鉄道技術展」に展示した。その3カ月前には特許もとれたんです。技術展で印象的だったのは、視覚障害のご夫婦とお会いしたこと。ホームドアを触りながら、いろんな意見を直接、言ってもらった。「普及したら、うれしい」との声も聞いた。そのご夫婦は「頑丈、堅牢でなくても、普及してもらった方がいい」という考え。とりわけ、「駅に行くのが怖い」との話は衝撃でした。しかも「『怖い』のはホームからの転落ではない。自分たちのせいで、列車が止まったり、遅らせたりして人に迷惑をかけるのが怖い」とおっしゃった。ホームドアがある駅でも、白杖(はくじょう)がドアに当たり、センサーが反応することで、列車の運行に支障を来すことが実際にある。僕らのホームドアはセンサーが鳴らず、視覚障害の方が触れても問題がないものにしていきます。

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