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 「うちはiPad(アイパッド)使って練習してますよ」

 高校球児の「イマドキ」を探ろうと各校を回ってみると、宮崎商の五反田大輔主将(3年)がそう教えてくれた。やはりスマートフォン(スマホ)やタブレットの活用が浸透していると感じたが、話を聞いてみると彼らの場合は少々事情が違った。

 県内のほとんどの高校ではスマホ・携帯電話を校内へ持ち込むことが原則禁止されている。そこで球児たちの多くは自主トレの時間を使い、自分のフォームを撮影するなどスマホを活用している。だが、宮崎商野球部の場合はその制限がさらに厳しく、学校外で使うことも許されない。つまり「携帯」はおろか、「所有」すら認められていない。

 「高校時代の3年間は、スマホを触りたい気持ちを抑えて、学業と野球に打ち込んでほしい」。指導者には、そんな思いがある。

 冨永好希投手(3年)は、中学卒業時にスマホを買ってもらったが、1カ月も使わないうちに入部後、中学生の弟に泣く泣く譲った。「他校や他部の友達がツイッターをやってたりするのは正直うらやましい。でも今は野球に全力を注ごうと踏ん切りをつけてます」

 昨秋までは背番号1をつけていたが、現在は2番手。部を引退すると「スマホ解禁」となるが、夏の大会を控えた今はエース争いの真っただ中。邪念を捨てて集中を高めている。

 一方で、五反田主将は「甘い物を食べられない食事制限に比べると、スマホがないくらい、どうとも思いません」と涼しい顔。受け止め方も選手によって様々だ。

 時代に逆らうかのような宮崎商野球部だが、3年前、田原謙一部長(43)が1台のiPadを導入した。「最近はインターネットでいろんな情報を仕入れる球児が多い。夢中になるのはよくないが、その面で不利があってはかわいそうなので」という計らいからだった。

 選手たちは練習中、自分たちの打撃フォームや捕球姿勢をiPadで動画撮影し合う。週に数回指導してくれるトレーナーがアドバイスする様子も保存されていた。後から誰でも見ることができる「指導動画」として重宝されている。

 このほか、42人の選手全員の「好調時」の打撃フォームや投球フォームの映像が保存され、調子があがらないときには見返して感覚を思い出す。

 iPadをよく使うという冨永選手は、自分の投球フォームを細かくチェックする。軸足のひざが曲がりすぎる、体の開くタイミングが早すぎる……。「がむしゃらに頑張れば頑張るほど、理想のイメージとやっていることが合わなくなってしまうことがある」。スローモーション機能も使って再生すると、細かい修正点に気づけるという。

 樋渡祐志(ひろゆき)監督(46)は「昔は自分を客観視する方法が鏡くらいしかなかった。人から言われて気づくのを待つのではなく、能動的に自分の目で気付こうとできる良い方法」と話す。

 保護者の理解もあり、月々の使用料は保護者会費から出してもらっている。

 わずか1台のタブレット。先輩のほか、マネジャーを含め現在の48人が使い込んだ結果、画面にはいたるところにひびが入っている。

 「3年使ってくたびれてきたけど、僕らにとっては貴重な1台。大事な野球道具の一つとして受け継いでいきたい」(大山稜)