[PR]

 かごに入った球を自ら取り出し、ノックバットを振る。男子部員たちは懸命に球を追いかけ、何度も飛びついてユニホームは土で汚れた。

 テンポ良くノックをする八百津(岐阜)のマネジャー、赤星未来音(みきね、3年)は2015年に入学した。当時、野球部員はわずか5人。この年、赴任した監督の金子浩隆(42)の呼び掛けに応じた赤星ら新入生9人が加わり、休部中だった部は再スタートした。

 半年間使われていなかったグラウンドは草だらけ。倉庫にはカビが生え、球が散乱していた。

 部員たちは全員で草むしりに取りかかる。赤星ら3人のマネジャーは倉庫整理を任され、倉庫に散らばった球をノック用と打撃練習用に分け、革がめくれた球はテープで補修した。

 御嵩町立向陽中学校時代、ソフトボール部で投手だった赤星は「即戦力」としての役割も求められた。監督はあえて赤星を打撃投手やノッカーに指名した。「マネジャーも一緒に戦っている」という思いが選手たちに伝わってほしかったからだ。

 赤星の活躍は監督の期待を大きく上回る。「打撃練習で直球だけじゃ練習にならんやろ」と思い、スライダーとカーブも覚えた。「対戦相手」が空振りするとうれしくなった。練習試合で試合前に投手のキャッチボールの相手をすれば、相手ベンチからは驚きの声が上がった。

 中学校で友人関係に悩んだ苦い経験があった赤星は、本当は内気な性格だと思っている。理由も分からず同級生から無視され、信じていた友人には「裏切られた」。煩わしい人付き合いを避けるため、高校では部活に入らないつもりだった。マネジャーになることは赤星にとって勇気のいる一歩だった。

 そんな赤星に選手たちは心から感謝している。

 「冬でも冷たい水で選手が使うコップを洗ってくれている。見えないところで支えてきてくれた」。主将の山口力輝(3年)は感謝する。いつも次に何が求められているかを考えて動く赤星を、金子は「今まで出会った中で最高のマネジャー」と言い切る。

 3年生になった今、赤星は「少しだけ強くなった」と思う。「感謝されたいからマネジャーをやっているんじゃない」。自分のしたことがチームの勝利につながれば、それで良いと思えるようになった。

 心強い後輩マネジャーもいる。同じ中学のソフトボール部でバッテリーを組んだ高山麻鈴(まりん)(2年)だ。まだ頼りないところもあるけれど、引退までにたくさん仕事を教えてあげたいと思っている。

 練習の環境を整えるのに精いっぱいだった1年生の夏は初戦でコールド負け。2年生の夏は九回まで粘ったものの、やはり初戦敗退。「今年こそは1勝して次の目標を後輩にあげたい」と願っている。

 自分自身のひそかな夢もある。昨夏、甲子園でノックの補助に入った女子部員がいるのを知った。「甲子園でノックなんて、夢のまた夢だけど、やっぱり憧れる」

=敬称略