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 鹿児島県大崎町で1979年に男性(当時42)の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人と死体遺棄の罪で服役した原口アヤ子さん(90)の再審開始を認めた鹿児島地裁決定について、鹿児島地検は3日、即時抗告した。福岡高裁宮崎支部が裁判をやり直すかどうか改めて判断する。

 事件をめぐっては、共犯者とされる知的能力に問題がある元夫や義弟の自白や、それを聞いたという義妹の証言の信用性が争点になっていた。

 2015年7月に申し立てた再審の第3次請求で弁護団は、心理学の観点で自白や証言の内容を分析した「供述心理」の鑑定書を新証拠として提出。義妹の証言を、実際に自白を耳にしたとしては不自然な点が随所に認められるとした。

 6月28日の地裁決定は、この供述心理鑑定について「総合的な信用性の判断に際し、有意な情報として利用することができる」と高く評価。元夫や義弟の自白は、捜査機関の誘導などで供述が変遷した疑いがあると指摘した。自白の信用性を補強するとされた義妹の証言も「信用性の高いものとは言えない」として、原口さんの関与を認定した確定判決の事実認定に「合理的な疑いを生じさせる」と結論づけた。元夫(故人)の再審も認められた。

 検察側は「共犯者らの自白は具体的で整合性がある」と主張しており、供述心理鑑定を採用した地裁の判断などを不服として即時抗告を決めたとみられる。

 原口さんは当初から一貫して無実を主張。90年に出所し、95年に鹿児島地裁に再審を請求。一度は開始決定が出たが、福岡高裁宮崎支部が取り消していた。

 原口さんが90歳と高齢であることから、弁護団は2度目の再審決定後、最高検に対して即時抗告しないよう求めていた。(野崎智也)

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 弁護団は3日正午過ぎ、鹿児島市内で報道陣の取材に応じた。原口アヤ子さん(90)は、検察側が即時抗告するとの報道を受け、電話で弁護士に「頑張ります」と語ったという。面会した支援者から「死ぬまで戦うつもりなのか」と問われると、支援者を見据えてしっかりとうなずいたという。

 弁護団長を務める森雅美弁護士は「90歳という年齢で、2度目の即時抗告となるとまた何年かかかることになるので、原口さんが耐えられるか心配。検察には『人権をどう考えているのか』と言いたい」と述べた。