[PR]

 小児がんや免疫不全の治療に必要な「無菌室」を増設するため、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)は5日、クラウドファンディング(CF)で整備資金の募集を始めた。利用患者は増加傾向で、現在2室ある無菌室は常に埋まっており、壊れたシャワーも改修できない状態だ。9月8日までに1500万円を集めることを目標にしている。

 CF最大手のサイト「レディーフォー」のプラットフォームを使う。プロジェクト名は「小児がんと戦う、みんなの願い。不足する無菌室をつくろう!」。

 同センターの「無菌室」は、4畳半ほどの広さに、テレビやトイレ、簡易シャワーがあり、大きな窓越しに家族らが様子をうかがえるようになっている。治療による免疫力の低下で、感染リスクを下げるため、1カ月ほどは、この部屋から出られない。

 「無菌室」は、小児がんの3分の1を占める白血病のほか、神経芽腫、骨髄不全、免疫不全の患者にも使われている。正常な血液細胞を作れなくなった患者に、患者自身または提供者(ドナー)から採取した造血幹細胞を移植するためだ。

 同センターによると、移植件数は、2014年度が12件、15年度が20件、16年度が30件と増加傾向にある。難治性の小児がん患者の受け入れが増加していることなどが背景にある。いまは一般の個室に簡易装置を持ち込んだ「簡易無菌室」も駆使してやりくりしているという。

 中学生の時に白血病を発症し、昨年9月に「無菌室」で治療した高校1年生の女性(15)=東京都=は今年3月に退院したが、合併症で再び入院生活を送っている。「無菌室は、つらいことしかなかったから、『出たい』ということしか考えていなかった。お母さんとガラス越しでないと話せないし、精神的につらくなりやすい部屋だった」と振り返る。「どんよりした部屋だった」が、友だちがメッセージやアルバム作ってくれたことが励みになった。

 新しい「無菌室」は、小中高校生がいる病棟に造られる計画だ。「(壊れているため)バケツと簡易用ホースを使って流すような狭いシャワーを変えて欲しい」「(つらさを)1人だけで抱え込まないように、ガラス越しでも人と会えるようにして欲しい」と要望する。

 今の希望は、「毎日学校に通って、『テストやだー』と言いたい。リュック背負って電車で通いたい。ふつうの女子高生がしたいんです」と笑顔で話す。

 高校3年生の男性(17)=群馬県=と小学6年生の男性(11)=埼玉県=は、免疫不全で造血幹細胞移植を受けた。

 男子高校生は、「当事者の意見を反映して欲しい。1カ月ぐらいそこにいなくてはいけないので少しでも過ごしやすい環境にして欲しい」と話す。男子小学生は、「(現在の無菌室は)クーラーの温度調節が難しい」と注文を付ける。

 同センターの松本公一・小児がんセンター長は、「小児がん医療は、少ない予算の中で、それぞれの病院が精一杯頑張っている」としたうえで、施設整備については「小児病院は、(大人のがんも扱う専門病院のような)成人がんのリソースが利用できない分、苦しいのです」と話す。移植・細胞治療科の加藤元博医長は「関心がある人から寄付を集めるのは、理想的な解決の仕方」とCFに期待を寄せる。

 「無菌室」の新設には、1室当たり2500万~5000万円の費用がかかる。東京五輪の影響もあり、施工費に変動があるためだ。CFでは足りない資金については、企業などにも呼びかけていく予定だ。

 プロジェクト「小児がんと戦う、みんなの願い。不足する無菌室をつくろう!」(https://readyfor.jp/projects/ncchd-clean-room別ウインドウで開きます)は、9月8日が期限で、それまでに目標金額の1500万円に寄付が達しないと不成立となる。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/

(岩崎賢一)

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき・けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで、医療を中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』、『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)