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(16日、高校野球大阪大会 花園8―6東大阪大柏原)

 同点で迎えた九回裏2死二塁。「決めてやる」。花園の笹川拳士郎君(3年)は打席に向かった。

 「深呼吸しろ」「楽にいけよ」と声が飛ぶ。一息つき、肩の力を抜いた。

 狙っていたインコースの直球だったこと、思い切り振り抜いたことは覚えている。何球目だったかは、記憶がない。

 一塁ベースを回った時、左翼手の上を越える打球が見えた。入る――。初めてのサヨナラ本塁打だった。

 主将の三宅杏史(あんじ)君(3年)は「笹川は苦しい思いをしたから、絶対打ってくれると信じていた」。

 ちょうど1カ月前の6月16日。ノックの練習中、イレギュラーに弾んだ球が笹川君の顔を直撃した。右目下のほおが陥没骨折。鼻も折れた。入院し、手術を受けることになった。

 病室でLINEを見て対戦相手を知った。「強いところをひいたな」。顔がぱんぱんに腫れ、食事もできない。大会に間に合うかどうか……。弱気になった。

 川田龍亮君(3年)たちが見舞いに来てくれた。「待ってるぞ」。この一言が励みになって、「代打でも出たい」と、榛田雅人監督(50)に願い出た。

 7月3日に退院。練習を再開したのは1週間前だ。毎日、素振りに徹し、なまった体を動かした。

 この日。チームは先制したものの、すぐ追いつかれ、逆転を許す苦しい展開だった。

 出番は七回に回ってきた。初打席はスライダーで三振。2打席目の九回は、直球に絞ったことがサヨナラ本塁打につながった。

 チームは沸き立ち、校歌を歌うために整列するのを忘れてしまうほどだった。

 次は春の府予選で負けた興国戦。「つなぐ野球をしたい」。笹川君はすでに気持ちを切り替えていた。(高木智子

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