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 ロンドン郊外にある伝統の芝コート。毎年、夏になると、そこに足を踏み入れる日本人がいる。

 岐阜市在住の審判員、大原泰次郎さん(54)だ。16日に幕を閉じたテニスの4大大会、ウィンブルドン選手権への参加は今大会で通算14回目を数えた。センターコートで、女子シングルスの準決勝に立ち会うなど、世界最高峰の舞台で貢献する。

 日本では主審の大原さん。ウィンブルドンで担うのは、打球が入ったかどうかを瞬時に見極める線審だ。トップ選手のサーブが時速220キロを超える中、CGを使った判定システムが採用され、近年は「見る目」がより試される。今大会では自身の判定に対し、選手の「チャレンジ」を10回ほど受けたという。だが、自分のジャッジがすべて正しかった。「重圧はあるが、すぐに答え合わせが出来るし、結果が自分の判定通りだと自信が深まる」

 「聖地」に集う審判のレベルは高い。書類審査に通るだけでも狭き門。今年の本戦に呼ばれた審判約330人のうち、日本人は3人だけ。大原さんも最初の3年は、別会場で行われる予選に加わるのがやっとだったという。線審は技量によって四つのランクがあるが、大原さんは最上位の資格を持つ。センターコートに入れるのは限られた人数のみ。

 仕事ぶりは毎日厳正に評価され、信頼を得られなければ、大会終盤まで残ることもできない。そんな厳しい場に居続けられるのは、「縁の下の役割が好き」な性格が幸いしている。

 岐阜市で毎年開かれる国際大会の審判に誘われ、「トップ選手の生きたボールを間近で見られる」と、のめり込んだ。国際資格も取得。10年以上前に全豪オープンへの参加が認められたのを機に、他の4大大会も回るようになったという。2008年と12年には五輪も経験した。

 最近、こう思うようになってきたという。

 「年齢的に、審判を続けられるのはあと1、2年かもしれない」

 2年前からは日本テニス協会の審判委員長。20年東京五輪へ向けて、自身の経験を若手の育成に生かそうと考えている。(富山正浩)