■最前線を歩いて:下

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)研究員の吉村正志さん(46)、技術員の小笠原昌子さん(45)に連れられて到着した宜野湾市大山地区の調査地点は、芋畑だった。沖縄で「ターンム」と呼ばれるタイモ(田芋)の畑が広がる。ここは私有地で、タイモ農家と話をつけて、一角にトラップを設置させてもらったという。

 一帯は、普天間飛行場のある台地からの地下水が湧き出る湿地帯だ。「鳥もたくさんいる。魚も、エビも、バッタも、アリもいる。ここの自然は違うと、踏み入れた瞬間に思いました」。最初にこの畑を見た時の印象を、吉村さんはこう語った。

 足元は大柄の黒いアリで埋まっている。白い地面が黒く見えるほどだ。沖縄本島から台湾、東南アジアにかけて分布するクロトゲアリだという。「10年ぐらい前から増えたんだよね」と、トラップの設置に協力している地元の農業宮城優さん(53)が漏らす。吉村さんによると、このアリは環境が合うと大量に増えるものの、合わないで姿を消した地域もあるという。

 宮城さんは「僕の幼少期よりも随分虫が減った。フナもカエルもいなくなった」と話した。この土地で生まれ育ち、農業を引き継いだ。「ただ、若い人は農業をしたがらないねえ」。後継者不足が深刻で、畑も荒れるところが少なくないという。

 環境省によると、日本の生物多様性は四つの危機にさらされているという。

 ①開発や乱獲による種の減少、絶滅。生息生育地の減少

 ②里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下

 ③外来種などの持ち込みによる生態系のかくらん

 ④地球環境の変化

 吉村さんによると、島という閉鎖空間の沖縄で深刻なのは「3」の外来種だが、このタイモ畑の問題は「2」だという。人の手が入らないことで、逆に生態系が荒れかねない。実際、畑の一部は耕されなくなり、草ぼうぼうになっていた。その中に、半分水につかってトラップが設置されていた。

■予測不能のインパクト

 ヒアリの上陸を防ぐために、OISTや沖縄県はこれら24カ所の調査地点だけでなく、港湾での監視を強化している。7月中旬現在、沖縄でヒアリが上陸した痕跡はうかがえない。台湾ではヒアリが上陸して広がった結果、いなくなった在来種もあり、地域の「アリ相」が単純化されているという。沖縄ではまだその段階に至っていないものの、気候が似ているだけに危険性は拭えない。

 ヒアリではないものの、外来種…

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