[PR]

 関東大震災から94年たった1日、犠牲者を悼む大法要が東京都慰霊堂(東京都墨田区)であり、秋篠宮ご夫妻や遺族ら約600人が参列した。一方、震災時に虐殺された朝鮮人らを追悼する式典もあった。小池百合子都知事がこの式典への追悼文送付を取りやめたことに対し、式典の参加者から戸惑いや批判の声があがった。

 大法要は都慰霊協会の主催。近年は、都知事の追悼文を副知事が代読しており、この日も安藤立美副知事が「天災の脅威などを決して風化させることのないよう、後の世代に語り継ぐとともに、(今日の)平和で安全な生活は、先人たちの大変なご苦労とたゆまぬご努力の上に築かれていることを忘れてはなりません」などとする小池氏の追悼文を読み上げた。その後、参列者らが焼香するなどした。

 慰霊堂は、大震災と太平洋戦争の東京大空襲で亡くなった計約16万3千人の遺骨を安置しており、毎年3月と9月に法要を開催。小池氏は、この法要で大震災の全ての犠牲者を追悼するとし、昨年まで都知事が送る慣例だった朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付をやめた。地元の山本亨・墨田区長も同じ対応をとった。

 これについて小池氏は、「(朝鮮人らに向けた)特別な形での追悼文は控えた」と説明している。小池氏のこうした対応について、法要に参列した遺族の真中都枝子(としこ)さん(85)=東京都文京区=は「歴史というものは、正しく慎重に振り返るべきだと思う。毎年続けていたことをなぜ今年から取りやめたのか、国民が納得できる説明をしてもらいたい」と話した。

 一方、朝鮮人犠牲者らの追悼式も、慰霊堂のある都立横網町公園内であり、約200人が参加。大震災の直後、デマが広まる中で虐殺された多数の朝鮮人らを追悼する碑が1973年に公園内に建てられ、市民団体の日朝協会などがその後は毎年、追悼式を催してきた。

 追悼文送付をやめた小池氏らの対応を、主催する日朝協会東京都連合会の宮川泰彦会長は「自然災害の犠牲と人の手で虐殺された犠牲とは性質が異なる。虐殺の歴史的事実に目をつぶるものだ」と批判した。

 虐殺を巡っては、追悼碑にも記された「6千余名」などの犠牲者数を「根拠がなく過大」とする主張があり、これを支持する団体も公園内で慰霊行事を開いた。団体は「六千人虐殺は本当か! 日本人の名誉を守ろう」という看板を掲げるなどした。(野村周平、辻健治、編集委員・北野隆一

     ◇

 〈関東大震災と朝鮮人虐殺〉 1923(大正12)年9月1日午前11時58分に相模湾周辺を震源とする巨大地震が発生。各地で火災が起き、政府の中央防災会議が2009年までにまとめた報告書によると10万5千人余が死亡した。

 混乱の中、「朝鮮人が略奪や放火をした」などの流言が広まり、各地の「自警団」が朝鮮人らを殺害する事件が多発。これについて報告書では「武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加え殺害する、虐殺という表現が妥当する例が多かった。対象は朝鮮人が最も多かったが、中国人、内地人(日本人)も被害にあった」とした。政府文書には、軍や警察が朝鮮人を殺傷したことを示す記述もある。

 犠牲者数は正確には分かっていないが、報告書では震災の全犠牲者のうち「1~数%」と推定。地震直後の在日朝鮮人らの調査で「約6600人」などとする数字もある。