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 「日本一たのしむ」をモットーに、10年ぶりに全国高校総体(インターハイ)に出場したチームがあった。7月31日に山形県白鷹町で開かれたソフトボール女子2回戦で、奈良女子と対戦した利府(宮城)。試合は1―3で逆転負けを喫したが、最後まで笑顔を絶やさなかった。

 そんな選手たちの姿を心待ちにしていた総監督の姿は、会場になかった。鈴木隆(たかし)さん。昨年9月に咽頭(いんとう)がんが見つかり、声帯を摘出してからは手のひらサイズのホワイトボードを使って筆談で指導を続けていた。だが、7月19日、67歳で亡くなった。

 「このチームに技術はない。まずは自分たちの力を出すために、楽しんでやろう」。鈴木さんは、徳重貴宏監督とともに、選手たちに常々こう言っていた。亡くなる2日前にも、「インターハイは必ず応援に行くから、思いっきり楽しめ」と伝えていた。

 主将で捕手の上野あいり(3年)は「受け入れられなくて、気持ちを引きずったこともありました。でも、たかし先生にインターハイで良い姿を見せるために、練習の時は嫌な気持ちを抑えていました」。試合中は、右足のふくらはぎがつりながらも力投する斎(いつき)紅稲(あかね)(3年)をもり立て、試合が終わると、泣くチームメートを抱いて頭をなでた。

 鈴木さんの写真は試合中、ベンチに置かれていた。楽しんでいる姿は見せられたのではないですか? そう聞くと、上野は言った。「日本一たのしむことはできたと思います。でも……、たかし先生のためにも勝ちたかったので……」。声を詰まらせ、目を潤ませた。(菅沼遼)