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 南米ベネズエラのマドゥロ大統領が新憲法制定のための制憲議会選挙を強行したことを受け、トランプ米政権は7月31日、マドゥロ氏に対する金融制裁を発表した。マドゥロ氏が幅広い人権侵害に関わったとして「憲法と民主的な秩序の決裂を示している」と厳しく非難した。一方、ベネズエラでは、自宅軟禁の状態だった野党の有力指導者2人が相次いで連行され、緊張が高まっている。

 米財務省の制裁で、マドゥロ氏が持つ米国内の資産が凍結され、米国の市民や企業との取引ができなくなる。ムニューシン財務長官は声明で「昨日の非合法の選挙は、マドゥロ氏がベネズエラ国民の意思を軽視する独裁者であることを裏づけた。制裁により、米国は彼の政権の政策への反対とベネズエラ国民への支持を明確にする」と述べた。

 米政府は「ベネズエラは世界有数の原油の埋蔵量があるにもかかわらず、政府が広範な汚職に関わり、数千万人の国民が飢えている」とも指摘。米メディアによると、米政府はベネズエラとの原油取引の禁止などの追加制裁も検討しているという。ただ、物不足やインフレに直面する国民への影響が大きいため、追加制裁には懸念の声もある。

 ロイター通信によると、マドゥロ氏は「帝国の命令は受け入れない。ドナルド・トランプよ、制裁を続けるがいい」と反論。「米国では、対立候補より300万票少なくても大統領になることができる。何と素晴らしい民主主義だ」として、昨年の米大統領選でトランプ氏がクリントン元国務長官より得票総数が少なかったことを引き合いに出して皮肉った。

 一方、ベネズエラ国内では、反政府デモを扇動したなどとして有罪判決を受けて自宅軟禁の状態だった野党指導者レオポルド・ロペス氏とアントニオ・レデスマ氏が7月31日深夜、相次いで情報機関職員に連行された。両氏の家族がツイッターで明らかにした。

 ロペス氏は7月に軍事刑務所から自宅に移され軟禁が続いていたが、制憲議会選挙に抗議するデモを自宅から呼びかけていた。反政府デモの全土での広がりを受け、マドゥロ政権が今後、さらに厳しい対応に出る可能性がありそうだ。

 強行された制憲議会選挙では、投票者数について与野党の主張が割れている。

 政府の管轄下にある選挙管理当局は、2千万人弱の有権者のうち800万人超が投票したと発表。しかし、野党がボイコットする中で強行された制憲議会選挙に投票するのはマドゥロ政権の支持者がほとんど。7月の世論調査でマドゥロ氏の支持率が2割を下回るなか、野党側は2013年の大統領選でマドゥロ氏が得票した約750万票を上回るはずがないと主張し、独自調査から実際の投票者数は300万人未満だったとしている。

 7月中旬に野党が行った非公式の国民投票では、700万人以上が制憲議会選挙の実施に「反対」票を投じた。そのため、野党側は「選管発表は国民投票の投票者を上回るように操作された数字だ」と批判している。

 デモが激化した今年4月以降、市民と治安部隊の死者は120人以上。

 米国や中南米諸国はマドゥロ政権の対応を強く批判しており、ペルー政府は対応を検討するため各国外相の緊急会議を8月8日にリマで行うと発表した。(ニューヨーク=五十嵐大介、カラカス=田村剛

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