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 超有名お笑いタレントも泣かした魚の寄生虫「アニサキス」。激しい腹痛を起こす食中毒の犯人で、患者が急増している。日本の食に欠かせない刺し身、すし。被害を未然に防ごうと静岡市の企業が「アニサキス発見補助器」を共同開発した。

 静岡伊勢丹(静岡市葵区呉服町1丁目)地下の鮮魚専門店「東信水産」支店。佐藤公春支店長(35)がイカを発見補助器にさらし、アニサキスが付着していないかチェックした。「いたら、ライトで浮かび上がるので、ピンセットで取り除く」

 補助器の導入前は肉眼でのチェックのみ。多い時は刺し身用に切る前のイカ1枚(十数センチ四方)に2~3匹いる。除去して切り分け、パック詰めにして店頭に並べる。導入後は補助器にかける手間が一つ増えたが、この半年間で身の中に入り込んで目視では見えなかった数十匹を補助器が見つけたという。「目視では見落としがありうる。補助器でほぼ完璧になった。事故は目下ゼロです」

 アニサキスはサバ、イワシ、カツオ、イカなどの魚に寄生する。人が食べると胃壁や腸壁に入り込み、七転八倒の激痛と嘔吐(おうと)を引き起こす。

 発見補助器を開発したのは食品スーパーなどに包装資材を納入している静岡産業社(静岡市葵区)。きっかけは取引先からの相談だった。調理の際、アニサキスを肉眼で見つけて除去するが、長さ2~3センチ、太さ0・5~1ミリと小さいので、見逃すこともある。「店頭に並べる前に最終チェックとして、もれがないかを調べる機械が開発できないか」と要請された。

 同社は、スーパーの陳列資材を製造している取引先のメーカー(兵庫県西宮市)と約10カ月かけて共同開発した。縦約23センチ、横約38センチ、高さ約18センチの箱形。刺し身や切り身などを入れてライトを点灯させるとアニサキスが浮かび上がる。1台11万円(税別)。昨年暮れ、第1号として、首都圏のデパートやスーパーなどで生鮮魚介を販売している東信水産(東京都杉並区)が全31店で導入した。

 静岡産業社は取引先のスーパーや鮮魚専門店に売り込みを強めている。同社は「食の安全・安心が第一。若い世代の魚離れ、魚の消費量減少に歯止めをかけたい」とし、担当者は「将来は少子高齢化で目がきく職人も減少、すり抜けの危険性も高まる。発見補助器が少しでも役立てたら」と話す。当面の販売目標はスーパーや専門店向けに300台だが、将来的には飲食店や一般家庭も視野に入れている。

 厚生労働省によると、アニサキスによる食中毒の患者は2006年、全国でわずか5人だったが、16年は126人に増えた。国立感染症研究所の試算では、年間約7千人に上るという。お笑いタレントの渡辺直美さん(29)が今春、すしを食べた後に胃が激痛に襲われた体験を語り、話題になった。

 アニサキスは内臓に寄生、魚が死ぬと肉に移動することから厚労省は消費者に①内臓はすぐ除去②内臓を生で食べない③目でよく見て除去するよう、注意を呼びかけている。事業者には①マイナス20度で24時間以上冷凍する②内臓を生で提供しない、などを要請している。

 国立感染症研究所によると、生のニシンの酢漬けが名物のオランダでは1968年、マイナス20度以下で1日以上冷凍し、解凍後酢漬けするよう法律で義務づけ、アニサキス患者を激減させたという。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(野口拓朗)