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 幼いころから、絵本や子ども向けテレビ番組で触れる性別のイメージによって、後の価値観は左右されるのでしょうか。アンケートには、メディアが描く女性や男性の姿が子どもに及ぼす影響を問う意見が寄せられています。声の一部を紹介するとともに、児童文学作家と、テレビの「戦隊もの」番組の制作スタッフに話を聞きました。

リーダー役は男ばかり

 「絵本の読み聞かせをしているが、男の子が主人公と言うものが多い。また、古い作品かもしれないが、父親は冷静で大局的な判断をし、母親はやさしく、心配性で目の前のことにおろおろする、というような作品が気になる。冒険するのは少年であって、少女ではない。こんなところからも男らしい、女らしいというすりこみができるのではないだろうか?少女マンガからジェンダーの歴史が見えるというのを読んだことがあるが、意識すると絵本からも見えてくる」(北海道・50代女性)

●「子どものうちから不適切な性的役割分担などを見て影響を受けてしまうことは避けたいのに、見せたいアニメがあまりありません。ジェンダーフリーのものを増やして欲しいです。大人になってから変えるのは大変です。子どもの教育、保育に関わる方にはジェンダーについて特に敏感になって欲しいです。そのためには、メディアでも問題を多く取り上げて欲しいです」(群馬県・30代女性)

●「戦隊モノのリーダーはいつも男、女の子はいつもピンクやリボンといった、子ども向け番組から刷り込みが始まっている」(滋賀県・40代女性)

「女はけなげ」子に影響

 「私は、大学でメディアにおけるジェンダー表象を学んでいます。小さな頃、友人がディズニープリンセスに夢中になっている一方で、私はセーラームーンが好きでした。『白雪姫』など初期のディズニープリンセスは、主人公が家事を担っています。また、劇中歌にも『~してくれる』などの受動的な歌詞が頻繁に登場します。家事をして王子様が来てくれるのを待っている、そんな姿に私はあまり魅力を感じられませんでした。対する『セーラームーン』には同性愛や、女性蔑視発言をする敵に果敢に立ち向かう女の子が描かれており素直に『すてき』だと感じていました。子どもの頃から触れるアニメだからこそ、女性に多様な選択肢を教えてほしいと思います」(大阪府・20代女性)

●「小学生の子供がいます。子供が見ている少女アニメには、見た目は男の子だけど性別は女の子というキャラクターも登場し、制作側もこういったことに配慮して作る時代が来たのだなと感じます。それでもやはり男は強くて守る、女は可愛くてけなげというところは変わっていなくて、子供がその影響を受けているな、というのを普段の言動から感じることがあります」(北海道・40代女性)

●「ジェンダーに縛られた役割について、中学生の頃から今までずっとノドに刺さったシャケの骨のように、気にならなかった時は無い。あらがおうにも風潮という壁は崩しようがなく感じられた。国民的アニメであるドラえもんのしずかちゃんやサザエさんのワカメちゃんはまだ子どもなのに、お利口さんであまり失敗をしない。ちびまる子ちゃんが出て、ようやくイヒヒと笑い、自分らしくのびのび描かれた。だからこそ、キャラ設定に社会的な枠で自己実現を目指しそうな予感を感じさせないところが受けたのかもしれない。そして私は女性性を人並みに享受し、今まで生きてきた」(埼玉県・50代女性)

●「メディアのジェンダー差別につながる表現は必ずあらためなければならないが、文学、小説やマンガアニメなどの非実在人物についてもそれを当てはめてしまうのは表現の自由を侵害する。文学、小説、マンガ、アニメ等はフィクションとして表現の自由を侵害しないよう分けて考えるべき」(栃木県・30代女性)

多様な生き方に触れて 児童文学作家・草谷佳子さんに聞く

 静岡市で絵本など約3万冊を集めた家庭文庫を主宰する児童文学作家の草谷(くさがや)桂子さん(73)に聞きました。

     ◇

 「草谷さんの著作が図書館から撤去されました」。市民団体から連絡が来たのは約10年前のことでした。

 撤去されたのは「ジェンダー・フリーで楽しむ こどもと大人の絵本の時間」というブックガイドです。冒険好きな女の子、育児を楽しむお父さんが登場するなど、男女の固定的な役割にとらわれない絵本約300冊を紹介するものです。四国にある図書館に電話で経緯を尋ねました。

 ――私の本を読んで、過激な思想と思いましたか。

 「いいえ」

 ――それならなぜ。

 「議員や上からの圧力があった」

 担当者は言いづらそうに答えました。題名に過剰反応して除籍させるのは図書館の自由にも反すること。残念でした。

 数十年前に出版されたロングセラー絵本は、当時の世相を反映して、「私作る人・僕食べる人」的な男女の描き方をしているものが珍しくありません。それらが固定的な性役割概念を子どもに刷り込む恐れは、もちろんあります。

 しかし、かつて著書が排斥された立場からは、それらの本が一律に排除されることを望みません。「これが正しい」「こっちは間違い」と大人の解釈を押しつけるのではなく、色んな絵本や実際の生活の中で、多様な生き方に触れさせればいいのだと思います。最近の絵本は、家事をする男性や働く女性の姿をごく自然に描くものも増えています。

 自宅の一室で、絵本や児童書などを子どもに貸し出す家庭文庫を35年続けています。あるとき、絵本を読んでいた小学校低学年の子が「間違っている」と声を上げました。そこには長髪の男性が料理をする姿が描かれていました。

 「いろんな人がいるの。こういうスタイルが一番落ち着くという人もいるんだよ」と話すと、「ふーん」とあっさり納得していました。

 子どもは大人と違って、疑問を持ったら素直にぶつけてきます。疑問を表明してくれるからこそ、こちらも伝えられる。子どもの素直な発信を信頼して見守りたい。常に心がけていることです。(聞き手・机美鈴)

「現実の2、3歩先 描いて」 戦隊シリーズの女性キャラ

 テレビ放送で40年以上の歴史を持つ「スーパー戦隊シリーズ」。主に「ピンク」の女性キャラクターがリーダーを支えるという描かれ方は、古い男女像を子どもに刷り込むことにつながっているのではという指摘が今回のアンケートに寄せられました。そんな指摘について尋ねたところ、テレビ朝日・東映の制作スタッフから文書の回答が届きました。

 戦隊シリーズは男児向けととられがちですが、「女児の視聴者も増えており、性別の差なく男女ともに楽しんでもらえる作品を志している」といいます。かつて紅一点だった女性戦士も今では「2人化」が増え、イメージカラーに青や白なども選んでいます。

 「守られる存在」ではなく、子どもたちが憧れ、目標とされる「戦う女性」と位置づけているそうです。リーダーのピンチを女性キャラが救う場面が一般的になってきており、また女性がリーダーだった作品も過去にはありました。「団結を描きつつ、誰かを守るために戦うことの大切さを学んでほしいとのメッセージを込めている」といいます。

 スーパー戦隊をジェンダー的な観点で分析している愛知淑徳大の若松孝司教授は「とはいえ、男性を優しく包み込むサポート役として描かれる女性がほとんど。まだ描き方がステレオタイプを脱しているとは言えないのでは」と指摘します。男女雇用機会均等法が施行された1986年の前後から女性戦士が複数登場するようになりました。男性戦士には「おっちょこちょい」「末っ子キャラ」など幅広い性格設定がされるのに、女性は「かわいい」か「冷静」のどちらかに絞られがち。かわいらしさか仕事のサポートかを女性に求めがちな社会を映していると若松さんは見ています。

 「現実に沿ってメディアが描けば、それが当たり前の姿だとして結果的に性役割を固定・強化してしまう。番組を視聴する3~4歳の子どもたちにとって、家族の枠の外の社会に触れるごく初期の作品だからこそ、作り手は現実の2、3歩先の多様な男女像を描く努力をしてほしい」と話しています。(山田佳奈)

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アンケート「ジェンダー表現の未来」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも募集しています。

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