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 夏の日差しで体を真っ黒に焼いた40代の男性が、出港の準備をしていた。「1時間後に出発だ。ベトナム沖まで行ってくる」

 7月19日、中国・海南島。南シナ海の大半の領有権を主張し、その実効支配を進める中国にとって最前線とも言える島に入った。

 海南省三亜市中心部から西へ1時間ほど車を走らせると、島最大と言われる崖州漁港が見えてきた。市政府などによる総額約30億元(約500億円)のプロジェクトで昨年8月に開港。800隻の漁船が停泊でき、拡張工事も進む。

 大型漁船の方へ歩を進めてカメラを向けた。すると突然、船の中から青シャツに白い短パン姿の乗組員が飛び出して、怒鳴りつけてきた。

 「撮るな、消せ!」

 軍艦ならともかく、漁船の撮影が認められないはずがない。抵抗したが男は無言でカメラを奪い、データを消去し続けた。

 仕方なく対岸に回って撮り直していると、釣り糸を垂らしていた王と名乗る初老男性が教えてくれた。

 「船の上部に大きな放水銃があるだろう。あの船の仕事はな、半分が漁で、もう半分が他国の船を蹴散らすことだ」

 2013年4月8日、崖州から230キロほど離れた同省瓊海市の漁港を習近平(シーチンピン)国家主席が訪れた。漁民一人一人と握手し、「党と政府はあなたたちに関心を寄せている」とねぎらった。

 習氏から激励を受けたのは「海上民兵」と呼ばれる人たちだ。漁民だが、軍を補佐する役割を担う。王さんによると、大型漁船に乗り込むのがこうした民兵。中国の力による海洋進出を支えている。(三亜=冨名腰隆)

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