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■ナガサキノート:この場所で

 長崎市江戸町の県庁坂通り沿いにタイル張りの建物がL字形にどっしりと立つ。県庁第3別館。爆心地から約3キロにあたる。周辺一帯は焼失したが、この建物は残った。長崎近代化遺産研究会会長の宮川雅一さん(83)は「長崎市中心部で現存している、唯一の被爆した近代建築かもしれない」と語る。

 庁舎は鉄筋コンクリート造りの地上2階、地下1階。1923年に長崎警察署として建てられた。戦中は現在の消防団にあたる警防団の本部も置かれ、入り口には看板を立てかけていたであろう金具が今もひっそりと残る。中に入り、2階の事務所をのぞかせてもらった。職員は「ここはかつて署長室だったと聞いています。刑事ドラマの撮影に使われたこともあります」。

 72年前のあの日、長崎署は爆風を受けた。長崎県警察史によると、「稲妻のような光に引き続いて大音響とともに、行政室(長崎署)は人の叫びと物品の倒散で一変した」。しかし、堅牢な建物は爆風に耐えた。

 そして午後0時半ごろ、今度は隣接する県庁本庁舎から火が出た。当時、空襲を避けて県庁の大半の部局は市内各地に分散疎開し、職員も少なかった。しかも消防隊の大半は被害が甚大な浦上方面に出動。瞬く間に県庁から、すぐ東の議事堂、北東そばの裁判所へと広がった。地上2階、地下1階、総面積約5500平方メートル。レンガづくりの純英国式建築の瀟洒(しょうしゃ)な県庁は夕方までに全焼した。一方、長崎署は風向きのせいか、延焼を免れた。

 当時の写真には、骨組みや壁の…

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