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(11日、高校野球 広陵10―6中京大中京)

 六回、中京大中京の先発磯村が、この回の先頭打者を三振に切ったところで、高橋監督はスパッと決断した。「ピッチャー香村」。ここまで広陵打線を3安打無失点に抑え込んでいた背番号10の左腕から、エースナンバーを背負った右腕への継投だ。2―0のリードを、このまま守り切るつもりだった。

 高橋監督は試合前から、香村に「回の途中でも、いつでも行くぞ」と声をかけていた。愛知大会でもそういう場面はあった。五回ぐらいから磯村の球威が少し落ち始めたと感じ、捕手の鈴木遼に聞くと同じ意見だった。実際、六回の先頭打者だった広陵の代打佐藤には、3球目にホームラン性の大ファウルを打たれた。そして、続く広陵のクリーンアップは3人とも右打者だ。

 そうしたいくつもの要因が重なり、高橋監督は決断した。球速もあり、低めの変化球でも勝負できる香村への信頼は厚かった。

 だが、六回1死からマウンドに立った香村の球は上ずった。「ブルペンから球は走っていたけどコントロールが利かなかった」。3番中村に、高めの直球を右中間スタンドに運ばれた。「あのホームランで頭が真っ白になってしまった」

 続く4番加川は外角の直球を右翼線二塁打。5番高田誠には左前に運ばれる適時打。香村はワンアウトも取れず、わずか10球で降板した。急きょマウンドに立った左腕の伊藤稜も後続を立てず、この回、計3失点で逆転を許した。五回まで完全に中京大中京ペースで進んでいた試合の流れは、あっという間に広陵に移った。

 継投策について聞かれる質問が続いた試合後のインタビューで、高橋監督は自ら「もう少し(先発の磯村を)引っ張ればよかったという意見もあるかもしれない」と切り出した。だが悔いはなかった。「3年生の3投手(磯村、香村、伊藤稜)で勝ち上がってきたチームですから」

 先発の磯村は、「自分の役割は、試合を作って味方が点を取ってくれるまで点をやらないこと。もう少し自分が投げられたらなという思いもあるけど、後悔はないです」と話した。後を継いだ香村は「観客がすごくて、のまれてしまった。磯村が抑えていたので申し訳ないけど、注目されたマウンドで良い経験ができた」。2人に涙はなかった。(平井隆介

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 ●高橋監督(中) 九回に粘る。「声援も力に出来た。(大逆転劇が)少し頭をよぎったが、相手は広陵さんですし、そこまで甘くない」

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