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 8度目の夏の甲子園優勝を目指した中京大中京。11日の広陵(広島)戦に6―10で敗退したが、最終回に打者9人の「全員野球」で3点をかえす猛攻を見せた。「史上最弱」と呼ばれたチームが大舞台で見せた戦いぶりは、「中京魂」の底力を感じさせる堂々たるものだった。チームに同行した担当記者が振り返った。

 4月末、初めて取材に訪れた私に、高橋源一郎監督が言った。「今年のチームは『中京史上最弱』と呼ばれてます」

 選抜大会出場をかけた試合で九回に逆転サヨナラ負け、春の県大会ではコールド負けを喫した「最弱」チーム。だが、愛知大会では試合を追うごとにチームがまとまり、甲子園の最終回では成長の証しを存分に見せてくれた。

 3―10と大差を付けられて迎えた九回裏の攻撃前。ベンチ前で円陣を組んだ選手たちは、声をそろえた。「最後まであきらめずに、全力でやっていこう。一人ひとりが次の打者につないでいくぞ」

 中前安打で口火を切ったのは、不動の4番・鵜飼航丞君(3年)。愛知大会では「野球人生で最大の不調」で打率1割台に終わったが、「甲子園ではチームのために必ず打つ」との誓い通り、意地を見せた。

 続く諸橋駿君(同)の適時二塁打で鵜飼君が生還。諸橋君のバットは、ベンチ外の坂井智哉君(同)から受け継いだ。18人の選手だけでなく、スタンドで応援する部員も含めて「チーム一丸」になった攻撃で、まず1点をかえした。

 さらに、谷村優太君(同)が死球で出塁し、好機を広げた。谷村君の父・和也さんは元甲子園球児。連続四球で失った1点で負けた父親から「一球の大切さ」を教えられてきた谷村君は、「どんな形でも出塁する大切さ」を体現した。

 その後、押し出しの四球でさらに1点を加点し、なおも2死満塁の好機で打席に立ったのは、伊藤康祐主将(同)。三回には本塁打を放ち、チームを引っ張り続けてきた主将の右前適時打でこの回3点目が入り、4点差に迫った。

 3安打3四死球で3点を奪う猛攻。ベンチからは、亡くなった祖母への思いを胸に好投を見せた磯村峻平君(同)や、この日、伝令役をこなし代打で安打を放った竹田健人君(同)らが、仲間を鼓舞した。

 さらに、逆転を期待する観客からは大声援が送られた。「球場全体の応援が力になった。甲子園に来られて良かったと思った」(伊藤主将)。

 逆転はならなかったが、最後まであきらめない「中京魂」に心を動かされた観客が、「最弱チーム」の強さを認めた瞬間だった。

 伊藤主将は試合後、八回から登板した浦野海斗君(2年)ら後輩に声をかけた。「甲子園に戻ってこいよ」。最終回、アウトになった沢井廉君(同)、関岡隼也君(1年)、小河原昌也君(2年)は、全員が下級生。浦野君は「先輩の分も背負って、必ず日本一になる」と誓った。

 中京魂は、後輩たちに引き継がれた。新チームが、伝統校の底力を再び見せてくれることに期待したい。(井上昇)

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