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 がん患者が最期を迎える際、一部の人は意識を保った状態で苦痛を和らげることができず、意識を下げる薬で「鎮静」の状態にする場合がある。薬を使うと、患者と家族との意思疎通ができなくなることがあり、いつどのような状況で始めるかは、患者や家族、医療者にとって時に難しい判断になる。日本緩和医療学会は、その判断のための指針の改定作業を進めている。

■家族に精神的負担も

 兵庫県の80代女性は2014年にがんが見つかり、腹膜に転移していた。15年8月、県内の病院の緩和ケア病棟に入院。2週間ほど経つと、強い倦怠(けんたい)感を訴えるようになり、痛みや落ち着きがなくなる「不穏」の症状も増してきた。

 入院22日目、泊まり込みで付き添っていた一人娘の長女(58)が、主治医に呼ばれた。「薬でうとうとさせて楽にすることもできます」。鎮静の相談だった。女性は「楽に逝きたい」と話していたが、長女は「会話できなくなることが怖かった」。夜はぐっすり、昼間は浅めに眠れるように薬を調節してもらった。

 女性は時折起きて、長女の介助でトイレをすませ、飲み物も口にできた。終日、意識を深く下げる鎮静に移ったのは亡くなる前日。「母は自分でトイレに行けることにこだわっていた。上手にケアをしてもらえた」と長女は振り返る。

 緩和ケアは意識を保った状態で苦痛を和らげることが目標だ。適切なケアによって、がんで亡くなる人の多くは、自然経過で意識が低下して穏やかな死を迎えることができる。

 だが、肺にできたがんによる呼吸困難や臓器不全で起きる意識障害は、通常の薬で改善できない。また、痛みを和らげる医療用麻薬では緩和が難しく、患者にとって耐えがたい苦痛の場合、鎮静が選択肢になる。

 学会の指針では、意識を下げる鎮静薬や睡眠薬を使ったり、苦痛緩和のために使った薬で生じた意識の低下を意図的に維持したりすることを鎮静としている。

 鎮静は患者の状態に合わせて意識を下げる深さと期間を調節する。一般的に浅い鎮静や時間を区切った鎮静が優先され、効果が不十分なら、深く意識を下げ続ける鎮静が選ばれる。深い持続的な鎮静は、患者が意思伝達できなくなり、家族に精神的な負担がかかることもある。

 鎮静を受けた患者の遺族を対象にした02年の調査では、79%が鎮静に「満足」と答えた一方、話ができなくなることがつらかった(49%)、鎮静を決める責任を負うことが重荷だった(25%)などの苦しい経験も明らかになった。

 調査した聖隷三方原病院(浜松…

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